https://mainichi.jp/articles/20210601/ddf/012/070/007000c

タコ　瀬戸内が育む歯応え、多幸感

日本人は大のタコ好きだ。世界の消費量の６割を占めているのだから。そればかりか、タコ足、タコ部屋、引っ張りダコに、ちゅうちゅうタコかいな、タコさんウインナーに蛸地蔵、蛸薬師まで、そこら中にタコがいる。でもブランドといったら兵庫・明石のタコだろう。明石ダコを育む瀬戸内海の成り立ちとは？

日本料理の大引伸昭先生が、タコのうんちくを傾ける。

大引「たこつぼは２０００年前に見付かってますし、奈良時代の文献に出ているので、日本人との付き合いは古い。今の時期は麦わらダコといって、麦を収穫するころのタコがおいしい。暦の半夏生（はんげしょう）は、関西では田植えを終えて、作物がタコの足のように根を張りますようにと豊作を祈ってタコを食べる習慣があります」

大引「明石ダイと同じで、カニやエビなど餌が豊富でうまみがあるし、潮流が速いんで、明石のタコは立つというほど筋肉質で弾力があります」

　さっそく辻調理師専門学校の石田充先生が出してくれた芋タコナンキンのタコは実に軟らかく、歯がスーッと入って、中からうまみがジュワーッ。「皮が破れないよう、大根でたたいて繊維をつぶすのが大変でした」と石田先生。「タコは筋肉を調理するので、歯応えを残して甘みを出すのが案外難しいんですが、めっちゃいい硬さ」と大引先生もご満悦。

　変わり揚げはたこ焼きのバージョンアップで、ウスターソースを衣に練り込んである。「日本酒にめちゃめちゃ合う」とマグマ学者の巽好幸先生もご満悦で、兵庫県朝来市の地酒「竹泉純米吟醸」をグビリ。明石名物の海藤花（かいとうげ）（タコの卵）と吸盤の黄身酢かけは、卵のプチプチ食感と吸盤のコロコロ食感がたまらない。