1以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:11:44.55 ID:P6WLg2HsO

伊達「あー、平塚先生に呼びだされちまったなぁ。きっとあの作文のことだろうな。興奮してきたな」

ガラガラ
伊達「失礼しまーす」

富澤「あぁ君きみ。カチコミ中わるいがこっちに来なさい」

伊達「してねーよ。ちゃんと制服着てんだろ。先生に呼ばれて職員室に来ただけだわ」

富澤「なんだなんだ、屁理屈こねて。反抗期か?」

伊達「わりと正論しゃべってただろうが。むしろお前のせいでグレそうだわ」







2以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:13:02.13 ID:P6WLg2HsO

富澤「実は、お前を呼びだしたのは私だ」

伊達「お前かよ」

富澤「平塚先生の変わりに課題を見ることになった、国語の臨時講師、富澤だ」

伊達「おいマジかよ。最初の興奮返せよ」

富澤「おい伊達、これはなんだ?」
ヒラヒラ

伊達「あーはいはい、俺の作文だろ」

富澤「これはハンカチだ」

伊達「あ、それハンカチなの!? てっきり課題の話かと思ったわ。なんでそんなのヒラヒラさせてんだよ。埠頭での別れか」









3以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:14:11.17 ID:P6WLg2HsO

富澤「間違えた、こっちだ。おい伊達、ちょっと読んでみろ」

伊達「なんで読むんだよ、ったく。えー、青春とは嘘であり、悪である――」

富澤「それもハンカチだ!」

伊達「またかよ! 何枚持ってんだよ。ってか俺読んじゃったじゃねぇか。なに読ませたんだよ」

富澤「まさかおまえ、ハンカチで作文をごまかしたんじゃ――」

伊達「ごまかせねぇよ。平塚先生バカにしてんのか。チェック柄で出してもバレるわ」

富澤「あったあった。こっちだこっち」
ピラピラ

伊達「ひとの話聞けよ」










4以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:15:02.83 ID:P6WLg2HsO

富澤「おい伊達、課題のテーマを言ってみろ」

伊達「あー、『高校生活を振り返って』だっけか。ははっ、俺なり振り返って書いたぜ。『リア充爆発しろ』ってな」

富澤「えっ、島忠爆発しろ?」

伊達「言ってねーよ、そんなこと。島忠に俺何されたんだよ。高校生活でそこまで関わりなかったわ。そうじゃねぇよ、リア充爆発しろだ」

富澤「あーリア充ね。はいはい」

伊達「本当に分かってんのかおまえ」









5以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:16:02.93 ID:P6WLg2HsO

富澤「ところでお前、部活動からは足を洗っていたな」

伊達「なんで犯罪みたいに言うんだよ。部活はまっとうな活動だわ」

富澤「お前、部活には入ってなかったな」

伊達「あー入ってねぇよ、そんなくだらねえの」

富澤「なにぃ!? じゃあうちの学校にも入ってないのか!」

伊達「入ってるに決まってるだろうが! 馬鹿じゃねぇの!? なんで俺ここにいるんだよ。カチコミじゃねーぞ」

富澤「その腐った根性を叩き直してやる。こっちへきなさい」

伊達「いて、やめろ。俺は部活に入らねぇぞ」









6以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:17:01.11 ID:P6WLg2HsO

~~

富澤「ついた。ここだ」

伊達「なんだよここ。空き教室か」

富澤「お前にはここで奉仕活動してもらう」

伊達「なんだよ奉仕活動って。あれか、流行りの『おかえりなさいませご主人様♪』ってか」

富澤「ははっ、ちょっと何言ってるかわからない」

伊達「なんで何言ってるかわからねぇんだよ」

富澤「いいか。ここには国際教養科の眉目秀麗、成績優秀な女子が所属している。お前はそいつと一緒に奉仕活動し、更生してもらう」

伊達「ああ、そういえばJ組にいたな、そんなの。雪ノ下雪乃だっけか」

富澤「じゃあ合図したらお前も入るように」

伊達「なんで一緒に入らねぇんだよ」










7以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:18:04.53 ID:P6WLg2HsO

~~

伊達「あーでもあの雪ノ下さんと一緒になるのか。興奮してきたな」

どうぞー

伊達「失礼しまーす」ガラガラ

富澤「はじめまして、伊達くん」

伊達「さっきの先生じゃねぇか。なんで女装してんだよ。扉開けるまでのトキメキ返せ」

富澤「先生ではない。2年じぇじぇ組の富ノ下よ」

伊達「『じぇ』が一個多いな『じぇ』が。J組じゃないのかよ、そんなクラス聞いたことないわ」

富澤「国際教養科なんで」

伊達「国際教養科なのかよ。響き的に東北特化型だと思ったわ」

富澤「ついでに『のん』と呼んでもいいわよ」

伊達「完全にあまちゃんじゃねぇか。誰が呼ぶか。干されるわ」









8以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:19:02.46 ID:P6WLg2HsO

富澤「で、何の用かしら、伊達くん」

伊達「お前が呼んだんだろうが」

富澤「そんな腐ったウオの目で見られても何も出ないわよ」

伊達「“さかな”の目な。さかなの目。ウオの目は足の裏にあるやつだから。俺そんなに足の裏で他人の顔とか見ないから」

富澤「あ、顔そっちなの?」

伊達「お前どこと喋ってたの!? どう考えても上から聞こえてただろうが。靴の中からこんなクリアに喋れるか。さかなの目だ。さかなの目」

富澤「さかなの目ね」










9以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:20:01.40 ID:P6WLg2HsO

伊達「俺はそこまで腐ってないと信じてるけどな。妹からそう呼ばれてるだけだ」

富澤「妹……。それはいわゆる杯を交わした――」

伊達「そんな妹いねぇわ。血を分けた兄妹だわ」

富澤「生き血を分けた兄妹?」

伊達「物騒な言い方すんじゃねえよ。同じ母ちゃんの腹から産まれたんだよ」

富澤「食い破って!?」

伊達「寄生虫か、俺は! お前、保険体育で人の産まれ方教わってねぇのか。あれか、コウノトリが赤ちゃん運んでくるとでも思ってんのか」

富澤「ははっ、赤ちゃんは中出しで生まれるに決まってるじゃない」

伊達「言い方考えろ言い方。生々しすぎるわ。ってか、このくだりいつまで続けんだよ。もういいから、早く部活やってとっとと帰らせろよ」









10以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:21:03.02 ID:P6WLg2HsO

富澤「では、ゲームをしましょう。それに勝てたら帰ってもいいということで」

伊達「おう、良いぜ。へへっ、俺はゲームが得意なんだよ」

富澤「では、まずこのリボルバーに弾を一発込めて――」

伊達「ロシアンルーレットじゃねぇか! なんでそんな物騒なゲーム選ぶんだよ」

富澤「当たったら帰れるということで」

伊達「当たってたまるか! どこに帰す気だ。もっと平和なゲームにしてくれよ」









11以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:22:02.32 ID:P6WLg2HsO

富澤「では、ここが何部か当ててみなさい。それを当てたら帰ってもいいことにしましょう」

伊達「いいぜ。楽勝だな。良いのか、答えちゃって?」

富澤「どうぞ」

伊達「備品がほとんどない、部員もいない、お前は本を読んでいる、つまりここは文芸部だ!」

富澤「うーん、ちょっと何言ってるかわからない」

伊達「なんで何言ってるか分かんねぇんだよ」










12以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:23:20.77 ID:P6WLg2HsO

富澤「では最大のヒント。今、私がこうしていることが活動内容よ」

伊達「こうしていることだって? 分かんねえ、降参だ」

富澤「コリアンダー?」

伊達「言ってねぇよ。なんだよコリアンダーって。勝手にカレーの中に入れてろ」

富澤「ちょっとその例え、シチューに変えてもらっても良いですか?」

伊達「知らねぇよ! スパイスのことならインド人に聞けよ、そこら辺にカレー屋あるだろ」

富澤「では、答えに入りましょう」

伊達「もういいから早くしてくれよ」










13以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:24:06.11 ID:P6WLg2HsO

富澤「いい? 持つものが持たざる者に慈悲の心で与える。これをボランティアというの」

富澤「途上国にはODAを、モテない男子には女子との会話を」

富澤「そしてやられたらやり返す」

富澤「倍返しだ!」

伊達「あ、こいつ面倒くせぇわ」

富澤「人は私のことを半沢と呼ぶのよ」

伊達「あまちゃん設定どこいったんだよ。さっきまで「のん」とか言ってただろうが」

富澤「じゃ、ここまでの説明で分からないところあった人は挙手して」

伊達「なんで先生に戻ってんだよ。分からないことだらけだわ」










14以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:25:02.03 ID:P6WLg2HsO

伊達「もういい。帰る帰る」

富澤「ちょっと待って、話だけでも」

伊達「いやいや、もういいから」

富澤「もういいから入部させろ?」

伊達「言ってねぇよ。なんだその都合のいい解釈は」

富澤「わかったわ。じゃあ一分だけ話ましょう」

伊達「だから入らねぇって」










15以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 16:26:03.95 ID:P6WLg2HsO

富澤「あら、良いの? ここで逃げたら、あなたのその小太りは治らないわよ?」

伊達「大きなお世話だわ。お前もそう変わんねぇだろうが」

富澤「ここで逃げたら、あなたのその捻くれた心は治らないわよ」

伊達「勘違いしてるみたいだけどな、俺は一度も治せと頼んでねぇんだよ。だいたいな、逃げないでそこで踏みとどまるべきなんだよ。今の自分を肯定してやるんだ……ってな」

富澤「それが彼の最後の言葉であった」

伊達「殺すんじゃねぇよ殺すんじゃ」

富澤「ちゃんちゃん」

伊達「おい終わっちゃったよ。まだラブコメのラの字も始まってねぇじゃねぇか。もういいぜ」




終わり









20以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 20:03:30.22 ID:ldgt+pANO
嫌いじゃない






21以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2018/06/09(土) 20:54:19.46 ID:l8ML7nLkO
>埠頭での別れか
これすき