絵を描き続けたら人生救われた話

絵を描き続けたら人生救われた ②
153:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 16:19:16.61 ID:C73jG/nL0

>>152 ありがとう。是非最後まで付き合ってください。
今回から名前にトリップをつけることにしました。

ではぼちぼち続きを書いていきましょうか。



154:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 16:23:35.35 ID:C73jG/nL0

とにかく、俺と板尾にとっては初コミケってこともあって本当に緊張だった。
スペースの準備が終わると、いよいよコミケ開始である。
「…只今より、コミックマーケットを開催致します」
パチパチパチパチ…!!
場内アナウンスと共にコミケが始まった。

板尾「うおお…始まるんだな…」
「こええ…」



155:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 16:28:35.17 ID:C73jG/nL0

「…ォオオオオ……!!」
遠くから地鳴りのようなものが聞こえる。
板尾「これが…俗に言う…!開幕ダッシュ…!!」
友人「なんだよそのテンションw」

こういったものを味わえるのもサークル参加の面白いところであった。
果たして、俺たちの本を買ってくれるお客さん第一号はどんな人なのか。

ドキドキ…女性がいるわけでもないのにやたら動悸がした。
正直けっこうしんどかったけど、板尾たちには黙っていたのはいい思い出だ。



157:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 16:39:30.67 ID:C73jG/nL0

開幕して5分、10分…くらいだったか。板尾は割と自身のサイトでも宣伝していたことがあり
早々に一発目が売れた。
俺・板尾・友人「ありがとございます!」
人のよさそうなお兄さんが買っていった。

板尾「おお、お…売れたぞ…この手で…直接…売った…」
板尾は感極まっているようだった。



158:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 16:44:18.55 ID:C73jG/nL0

俺もただ感動していた。
本当に、自分の絵を気に入ってくれた人に
直接向い合って、直接自分の作品を渡す…

板尾はやっぱり繁盛で、すぐに二人目が来る。
「板尾さん…ですか?いつもサイト拝見してます…」
俺たちと同年代くらいの、若い男の子だった。
板尾「マジですか…ありがとうございます…!」

その時の板尾の笑顔がとても嬉しそうで、今でも時々フラッシュバックする。



159:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 16:47:00.63 ID:acwXBqVwO

美大にいて時間もたっぷりあって、漫画家目指してるのにこの一年頑張れたって自信持って言えない。
4月にこのスレに出逢いたかった…
>>1が泣きながら絵描いてたと読んで本当に自分が情けないorz
がんがる!
ありがとう!!



161:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 16:50:03.87 ID:C73jG/nL0

>>159 いえいえこちらこそありがとう。
159みたいな人にこそ是非見て欲しい話なんだ。
時間が許すなら本当、最後まで付き合って欲しい。一緒に頑張ろう。



160:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 16:49:05.93 ID:yUkk6pvd0

見てます。追いつきました。
俺も絵描きなのでとても興味深いです。
がんばってください



163:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 16:57:31.26 ID:C73jG/nL0

俺は予想以上に落ち着いた。
このまま仮に一部もはけなくてもいいな、なんて思い出したのを
今でもよく記憶してる。

でも、そんなことはなかった。
俺はこの時サイトやPIXIVで雀の涙ばかりの宣伝をしていた。
それが功を奏したのか。

俺より一回りの歳の離れた男性だった。
客「あなたが華丸さん…ですか。新刊一部お願いします」
「え、おお…は、ハイありがとうございます…!」



165:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 17:02:15.55 ID:C73jG/nL0

客「楽しみにしてました(ニコッ」
そう言ってその方は去っていった。
記念すべき、初めてのお客さん。
この記憶はもう一生忘れられないだろう。

「ちょちょ…み、見た!?俺の本!!売れた!売れたよ!!」
板尾「良かったなあ。ほんと、俺たち頑張ってよかったなあ」

自分の描いた絵を、誰かが確かに見ていてくれた。
その事実が本当に嬉しくて、感極まった。

この時の体験が、のちの俺を支える本当に貴重な体験だった。



168:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 17:08:24.62 ID:C73jG/nL0

なんやかんやで、板尾の本はペースを保ち続けて売れていった。
流石である。
俺はといえば鳴かず飛ばずかと思えば、案外ぼちぼち売れていった。
昼過ぎ…くらいだったか。

そに子が来た。本当にきてくれるなんて…
実に半年ぶりの再会であったが、すぐに気付いた。
ドキッとした。でも普段の動悸とは違うものだってすぐ分かった。



170:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 17:13:33.85 ID:IAmAl5V+0

そに子!!!!!!!



171:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 17:13:56.43 ID:C73jG/nL0

彼女自身、けっこうなオタでコミケには来ようか迷っていたらしい。
そして俺もいるし、結局来る決心をしたんだとか。

そに子「新刊一部、ください」
彼女は笑いながら言った。
俺も吹き出して、
「いやいや、お金はいりません」
なんて言ってそに子に本を渡した。
そに子「うわ、すいません…ありがとうございます…」
急に真面目になるそに子。



172:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 17:19:31.82 ID:C73jG/nL0

板尾「これはこれは、可愛らしいお客さんだね。知り合いなの?」
「いや、ほら、いつも言ってる…」
板尾はすぐに察してニヤッとした。
そに子は赤いマフラーを巻いていたが、そのせいか顔も赤くなっているように見えた。

板尾「あなたがそに子さんか…!話は聞いてるよ。
これ良かったら俺の本、あげるよ」
そに子「あ、とっても上手い…!!」
俺は少し嫉妬したw



175:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 17:25:03.48 ID:C73jG/nL0

板尾「そに子さんは、この後ヒマなの?」
そに子「ええ、まあ…w適当に見て回って、帰ろうかなって。
今まで勉強詰めだったので、今日くらいは少しだけ遊んじゃいますw」

そういうと板尾がコッチをぎろっと見た。
言いたいことは分かっていた。



176:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 17:29:41.45 ID:C73jG/nL0

この日、俺たちはコミケが終わったら
俺と、板尾と、友人の三人でメシを食おうってことになってた。

それで俺と板尾は地元が一緒。
時分は年末も年末。
なのでそのまま二人で帰郷しよう、という流れになっていた。

そして、板尾はそのコミケ終わりの三人のメシに
そに子も呼べ、と言いたかったのだろう。



178:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 17:35:32.28 ID:C73jG/nL0

そに子は元々私大志望だったし、センター試験があまり関係ない。
なのでまだそれなりに余裕があったんだろう。

「あ、あのさ…そに子ちゃん」
そに子「…はい?」
顔が見れない。色々と辛かった。

「コミケ終わったらさ、俺たちメシ食いに行くんだけど…
良かったらさ、そに子ちゃんも来ない?…ほ、ほら勉強とかも教えられるじゃん」
最後の一言は余計だった。でもこうやって言い訳したのを覚えてる。



179:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 17:43:02.56 ID:C73jG/nL0

そに子「いいんですか…是非ご一緒したいです!」
嘘みたいに笑ってくれた。
ビックリして心臓止まるかと思った。

そに子「それに…一応勉強道具とかもあるんですよね
なんか必要ないけど普段から持ち歩いちゃう…この気持ちわかりません?w」
(マジか…そこは冗談だったんだけど…さすが受験生…)
板尾「決まりじゃん。じゃあ閉会までまだ時間あるし見たいとこまわっておいでよ」
「そうだね…寒いし、風邪引かないように暖かくしてね」

そに子「閉会時間頃にまたここに来ますね!」



180:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 17:47:48.00 ID:C73jG/nL0

そういえば板尾の友人は何をしていたかと言うと
彼は新刊を落としてペーパー頒布だったので、終始俺らの売り子を手伝ってくれていた。

板尾「すっげえいい子じゃん、顔赤くしちゃって」
「そうだね…」
板尾「お前にはもったいないな。で、トイレ行かないの?」
「いや、全然快調。吐き気とかしないよ」
板尾「成長したな」



183:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 17:52:09.39 ID:C73jG/nL0

午後も2時くらいになった頃だったろうか。
板尾の本が完売した。
あいさつ回りにも行ったから、実質80部くらいだったと思う。

板尾は泣いていた。ぐしゃぐしゃになってた。
俺も泣きそうになったが耐えた。

俺の本も実質40部弱、そろそろ完売しそうだったからだ。



184:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 17:56:32.88 ID:C73jG/nL0

板尾は昔から熱い奴だった。
高校で出会って、バレー部で3年間共にして。
自分の感情には素直な奴だった。

間違いだと思ったら、例え相手が先輩でも食い下がるし。
試合に負けたりしたら大泣きして、勝ったらお祭り騒ぎをする。
そんなヤツだった。

完売したら板尾は泣くだろうなあと予想していたけど
やはり俺もつられて泣きそうになる。
でも頑張って耐えた。



189:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 18:07:41.79 ID:C73jG/nL0

その直後だったかな…けっこう時間経ったのかな…
よく覚えていないけど
俺の本もその時を迎えた。

俺の最後の一冊を買ってくれたのは
俺より一回り小さいくらいの女の子だった。
名刺を渡してくれたのを覚えてる。

「あ、ありがとうございます…!最後の一冊です…!」
女の子「本当に?やった、ラッキー。これからも頑張ってくださいね」
か、完売した…!?



191:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 18:13:34.17 ID:C73jG/nL0

「か、完売しました…」
パチパチパチ…!
周りのスペースの人たちが拍手をしてくれた。
隣の方「若いのによくやったねえ。おめでとう」
「あ、ありがとうございます…うえ…」
「い、板尾ぉ…」
板尾「おう、よくやったな…俺たち…うええ…」
二人で大泣きした。
よく覚えてないけど、けっこうな時間泣いてた気がする。
でも一瞬だった気もする。
もうよく覚えてないなあ…

その間板尾の友人が笑いながらスペース片付けたり、
「スケブする?」とか聞いてきた気がする。



192:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 18:18:57.68 ID:C73jG/nL0

俺はこの時、
コミケ前に絵が上手くいかなくて板尾に少しイライラしていたのを悔いた。
やっぱり板尾はすごいし、憧れ。
でも俺は俺なりの絵を描けばいいんだと、思えた。
そうなるともう嬉しくて仕方なかった。

それ以上に、こんなにも一緒に感動を共有できる板尾のことを
一瞬でも「アイツはずるい」とか「邪魔だ」と感じてしまった
自分が情けなくて仕方なかった。

もう自分でもなんで泣いてんだかよく分からなかった。



194:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 18:26:39.75 ID:C73jG/nL0

そのあとは、スペースを片付けて
俺達も少しフラフラした。

スペースでは板尾の友人がスケブを描いていた。
友人「俺はここにいるから、二人は色々見てきなよ」
いいやつすぎる。
コミケも佳境に差し掛かっていたが、作家も、買い手も目を輝かせていた。
この時見た景色は今でも忘れらない。

ビッグサイトの、あのバカ広い会場の中で板尾と二人で歩いた。



196:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 18:33:10.96 ID:C73jG/nL0

この日に見たもの、感じたものは、本当に大きかったんだなって
今でも思う。

「以上をもちまして、コミックマーケットを閉会します…」
パチパチパチ…!!
板尾「終わったなあ…」
「いやー気持ちいい」
友人「お疲れさん、二人とも」



197:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 18:39:39.70 ID:C73jG/nL0

スペースでマッタリしていると、そに子がやってきた。
そに子「ごめんなさい…みんな撤収しちゃってて、迷っちゃいました…」
相変わらず顔を真っ赤にしていた。
「いや…全然大丈夫だよ」
板尾「面白い子だなwそれじゃみんな揃ったし、ここにいるのもアレだから
とりあえずビッグサイトから出るか?」
「腹減ったーメシいこうメシいこう。」

そに子を交えて晩飯タイム。俺は意気揚々としつつ、
いつも通りでいられるか不安だった。



198:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 18:44:16.32 ID:C73jG/nL0

俺は、この晩飯のレストランに着くまでの間に一つの事を確信してしまう。

ビッグサイトを出る。
りんかい線に乗る。駅に着く。

俺はその間ずっとそに子を見ていたし、そに子を気にかけていた。
コミケの帰りって、ビッグサイトから国際展示場駅まで、怒涛の人の流れなんだ。
俺はその中で絶対はぐれないようにそに子だけを誘導していた。

自分でも確信してしまった。



199:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 18:51:00.95 ID:C73jG/nL0

「ああ、俺この子のこと好きなんだな…」
間違いなかった。動悸がすると言っても今までの異性不信からくるものではない。
異性不信だった俺が、恋である。
俺はそう確信して、ビッグサイトからメシの場所に到着するまでの間、
すごく嬉しくなってしまった。

下手したらもう2度と無理かもしれないと思ってた恋に、
今自分は落ちたんだなあと思うと、ワクワクして、急に嬉しくなった。

それくらい、今までの異性不信にずっと悩んでいた。
そに子にまた直接会って、色々とはじけた気がした。



200:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 18:56:39.13 ID:C73jG/nL0

着いた先はサイゼリヤ…w
まあ大して時間もなかったし、板尾も疲れてたから
安く、たくさん食べたかったんだろう。

板尾「そに子さんも、絵を描くの?」
そに子「ええ、少し…でもまだまだ下手っぴですよw」
俺「頑張って練習してるもんね。絶対すぐ上手くなる」
板尾「ふーん…なるほど…」

最初のうちはわりと板尾も穏やかな感じで会話を始めた。



201:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 18:58:51.53 ID:jc7CDBvS0

なんか雲行きが怪しくなってきたな・・・。



202:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 19:02:08.51 ID:C73jG/nL0

板尾「ならさ、そに子ちゃんも大学受験終わったら華丸と一緒に一度
ウチの美大おいでよ。色々楽しいよ」
そに子「ありがとうございます…!華丸さん、行こうね…!」

多分この時俺は顔真っ赤だったんじゃなかろうか。
だって、突然好きな子が隣にいて、自分の方見て話しかけてる
って状況になってるんだ。
メシ食べるのもなんか無理やり行儀よく食べようとしたりしてた。



203:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 19:08:50.25 ID:C73jG/nL0

板尾「そに子ちゃーん、華丸のどこがいいのさー?」
は、始まった。板尾の悪ふざけタイムである。
昔からこういうお調子者気質な所が彼にはあるのだ。

テンパッてる俺を見て面白くなったんだろうなw
そに子「い、いえ…別にそんなわたし…」
板尾「そに子ちゃん実際学校とかでモテるんじゃないの?」
そに子「いえわたし女子高だし男子いないんで…w」

板尾は俺に気を使って場を盛り上げようとしているようにも見えた。
俺も頑張ってそに子に色々話しかけた。

そに子は終始笑ってくれていた。
とても楽しい時間だった。

でも俺たちの一日はまだまだ終わりではなかった。



205:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 19:12:58.49 ID:C73jG/nL0

俺は、このサイゼリヤで話したことは、今でもハッキリ覚えてる。

板尾とそに子と美大に遊びにいく約束をしたことも。
ただ、なんてことないものだと思っていた。

当然いつか実行できる約束だと思っていたし、何より浮かれていた。
この時交わしたこの何気ない約束が、のちのち俺の人生をまた微妙に変えてしまう。
207:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 19:20:19.03 ID:C73jG/nL0

そに子と、板尾の友人と別れて、
俺と板尾は故郷に向かう電車にのりこんだ。
少しだけ、長旅が始まる。

窓の外は真っ暗。一日の終わりだ。
板尾はなんだか静かだった。
板尾「ふう…今日一日マジで疲れたな!!本、完売してよかったわあ」
俺「だよね。本当、なんつーか最高の一日だったよ。
多分一生忘れない。」



210:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 19:26:44.20 ID:C73jG/nL0

板尾「思えばさ」
俺「ん…?」
板尾「ここまで来るまで長かった」
板尾は泣いていた。
どうしてそうなったのかよく分からなかった。

板尾「お前が初めてトラウマの事話してくれた時、俺どうしようかって思った」
板尾「女性に関われないって悩むお前見て、本当にどうにかしてやりたかった」

板尾「俺は絵を薦めた。言葉とか励ましよりも、
とにかく何か夢中になれること見つけて欲しかった。」

俺「そうだったね。本当、絵描き始めて良かった」



212:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 19:34:12.90 ID:C73jG/nL0

板尾「お前に絵を薦めたことも、本当は良かったのかどうか
ずっと悩んでたんだ…昔言ったろ?
絵を描き始めてから華丸は人と距離を置くようになったって」
俺「確かに高校の時よく言ってたね」

板尾「絵を薦めたものの、それが本当に華丸にとって良く働くのか。
俺は無責任なことをしたんじゃないかってずっと悩んでた。」
俺「……」

板尾「でも、それが…」



213:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 19:41:40.92 ID:C73jG/nL0

板尾「お前は絵を大好きになってくれて、今じゃ
こんなにコミケ一緒に出るくらいまで上達した。まぁまだまだ下手だけど…」
俺「泣きながらそれ言うかねw」

板尾「それでそに子ちゃんだよ。あの子が現れてくれて…
異性不信だったお前がまた女の子と普通に楽しく接せられるようになって。」
板尾「本当によかったよ…本当に。
お前あの子大切にしろよ…」

板尾はずっと顔を隠して泣いていた。
俺もだんだんつられて、涙目になった。
ずっと板尾に
「ありがとう、ありがとう」
って言ってた気がする。



216:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 19:49:01.86 ID:C73jG/nL0

このへんでとりあえずコミケ編は一段落。

俺は実家に帰った。
実家といえば天国、大晦日は紅白見ながらコタツにいれば
自動的に料理が出てくるw

俺はしばし実家を堪能することにした。
でも俺は肝心なことを、忘れていたんだ…
そう、あのメールを…



217:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 19:55:59.72 ID:C73jG/nL0

意外なことに、美保はあの
「久しぶり」
というメール以来メールをしてこなかった。

でもその音沙汰の無さっぷりが、逆に不気味に感じられた。
一体何が目的だったのか…大晦日の実家のコタツで、
俺は自分のケータイを見ながら悶々としていた。



218:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 19:59:10.75 ID:C73jG/nL0

そして年越しの瞬間。
おれはそに子や板尾たちにあけおめメールを送ろうと必死だった。
5,4,3,2…
俺「よっしゃ年越し!ジャンプ!!」
兄「うるせえな」

俺は毎年年越しの瞬間にジャンプをする。



219:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 20:03:02.94 ID:acwXBqVwO

私もジャンプしますw今から絵の練習がんがる!続き楽しみにしてるよ~



220:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 20:03:58.19 ID:C73jG/nL0

「あけましておめでとうございます!!」
ウチは毎年年越しの瞬間はジャニーズのライブのテレビと決まっていた。
新年を迎えた。去年は色々進歩の年だった。
今年はいい年になるだろうか…

これから良い事なんて何一つ無いとは知らずに、
当時の俺はのんびりそんなことを思っていた。

年を越した瞬間、携帯にたくさんメールがきた。



222:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 20:08:51.56 ID:3y9vRRh/0

何かいやな予感が。



223:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 20:11:06.81 ID:C73jG/nL0

たくさんの新年メール。
メールはそに子に、板尾に、高校のクラスメイトに…

美保もいた。
なんとなく予想はしていたが…

もっと体調が悪くなると思ったが、実際そうでもなかった。
なんでだろう、今でも分からない。
年明けテンションなのか、なんなのか。
俺はそのメールに返信してしまった。

ただ、スルーしておけばよかったのだ。



225:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 20:16:32.95 ID:C73jG/nL0

俺はそに子のおかげで異性不信もすっかり良くなっていた。
だから思わず気を許しちゃったんだろう。

送ってくるメールの内容もひたすら普通だったし、当時のことも
本当に悪いと思っているようだったから。
ただ、相手は自分を異性不信におとしめた根源だってことを、忘れてた。

正月ってヒマでしょ?割とみんな、社会人も。
だからメールとかすごいしちゃうんだ、無駄に。

美保とのメールで、
けっこうな事を話したと思う。今行ってる大学、美術部にいること…



227:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 20:22:53.18 ID:C73jG/nL0

俺だってこの時は美保のこと基本普通な子だと思ってた。
だからきっとあの時は何かの間違いで、彼女もおかしかったんだ…
そう思ってた。というか、そうであって欲しかったんだと思う。

このメールしてた時は、
美保は普通な子だったんだ、だからあのトラウマももういいんだ、
っていう証明みたいなものが欲しかったんだと思う。

う~ん、わかりづらくてゴメン。
この時の心境は、自分でもよく分からないんだ。



228:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 20:31:20.54 ID:C73jG/nL0

それから、またすっかり美保からの連絡は止んだ。
俺はほっとしていた。色んな意味で。

その頃だったか。
3月にまた美術部で割と小規模だけどまた展示会があることを聞いた。
さらに、板尾と二人で次の夏のコミケにサークル参加の申し込みもした。

よし、またお絵描き頑張ろう。
色々動き始めている気がした。なんていうか希望や展望に満ちてた。



229:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 20:33:15.09 ID:oUbYl0cW0

なんか、>>1の人柄が文章に出てて
好感が持てるな。続けてくれ。



230:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 20:33:58.85 ID:C73jG/nL0

キリがいいかな?
ちょいと晩メシ食べるので30分ほど時間あきます。
すいません、30分後にまた再開します~



233:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 21:02:21.18 ID:C73jG/nL0

もどった!みんなありがとう。ではまた続きをマッタリ書いていきます。



236:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 21:12:33.21 ID:C73jG/nL0

年が明けて、俺は生まれ変わったようだった。

色々やりたいことが見えてきて、ワクワクしてた。
まず、心配だったのはそに子の受験だった。私立なので2月に受験だと言う。

なので連絡もあまりとれなかったが、定期的に、本格的に勉強のことを
質問してくる電話がかかってきた。
一生懸命だし、頼ってくれるのはとても嬉しいことだった。



237:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 21:16:14.55 ID:C73jG/nL0

そに子も頑張ってるし、俺も展示会に向けてまた絵を頑張ろう。
それからはそに子の心配をしつつ自分もひたすら絵を描く日々だった。

そに子が大学に受かっていれば、そに子も展示会を見にこれる。

前回は板尾に頼ってばかりだったけど、今回は自分一人で
描ききって、板尾をビックリさせてやる。



238:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 21:19:29.82 ID:C73jG/nL0

2月某日。
俺の大学の入試の日だった。

俺は力になってやろうと思って、
キットカットを買ってスケッチブックを持って大学へ走った。
走ったと言っても電車に乗って行ったのだが。



239:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 21:24:19.51 ID:C73jG/nL0

先回りしようと俺は急いだ。
生活リズムのおかしかった俺は、久々の早起きで
息上がりまくり、貧血気味でフラフラだった。
そに子に電話した。
俺「はあはあ…今…どこにいる感じ?」
そに子「さっき駅出て…もうすぐ大学に着くよ」
俺「そっか…頑張ってね…」
(よし、このまま正門で待ち伏せだ…)



240:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 21:31:27.32 ID:C73jG/nL0

俺は前日までにたくさん絵を描いた。スケッチブック一冊くらい。
しかし、合格祈願とか、そういったイラストではなかった。
最初はむしろ渡すつもりも毛頭なくて、好きに落書きしていた。

でも、この絵をそに子に渡したらどうかな…と脳裏によぎった。
合格祈願とかそんなんじゃなくて、
試験前とか休憩中に、俺の絵見たら少しはリラックスできるんじゃないかな
と思ったのである。

なので俺はスケッチブック一冊好きに落書きしたものを、当日そに子に渡そうと決心したのである。



241:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 21:37:42.44 ID:C73jG/nL0

俺「あ、そに子…」
そに子「うわ!華丸さん…どうしたの?」
俺「これ…あげるよ…頑張ってね」
そう言ってキットカットとスケッチブックを差出す。
そに子は怪訝そうな顔をしてスケブをまじまじと眺めた。

でもすぐに笑顔になって、
そに子「何これ、バカみたいw」と言って笑った。
俺「いいから、頑張れよ」
俺は少し恥ずかしかった。
そに子「ありがとう、頑張るね…」
そに子はそういって校門をくぐっていった。緊張が解けたようで嬉しかった。



244:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 21:39:53.91 ID:C73jG/nL0

少々気付いてる人もいるかもしれないが、
俺は恋に落ちると好きになった相手しか見えなくなるフシがある。
そして少々やりすぎてしまうことがある。
この件もそうだった。

でもそに子は俺にひくどころか喜んでくれた。
本当に良かったと思う。



245:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 21:43:47.99 ID:C73jG/nL0

この日はなんだか本当に楽しかった。
受験っていう緊張感もあったからか、なんだか非日常の世界にいる気がした。

たくさん絵を描いたのも、駅から大学まで走ったのも、そに子を待ちぶせたのも
全てが楽しかった。バカなことしてるなあと思った。

でも、そんな自分がなんだかかっこよく思えて、
そに子と自分だけの世界があるような気がした。
本当に恋してたんだと思う。



247:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 21:56:16.74 ID:C73jG/nL0

そんなこんなで、とりあえずそに子の受験は一段落した。
あとは神に祈るだけだった。

俺はといえば、3月に迫った展示会の絵に向かい合った。
途中経過を板尾に見てもらった。
板尾「まだ細かいとこはあれだけど、なんつーかすげえ気持ち篭ってるな」
俺「今回の展示会は賭けてるからね」
板尾「なんかいつもそう言ってないか…」



248:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 21:58:41.72 ID:C73jG/nL0

板尾「次のコミケさは」
俺「うんうん」
板尾「二人で合同本にしよーぜ。なんか一つテーマを決めて。」
俺「あーいいねそれ。すげえ楽しそうじゃん」

板尾「金髪ツインテとかどうかなw」
俺「なんだそれwなら俺はショートヘアの女の子を推すw」

前回個人本だった俺たちは、次のコミケは合同本を出すことにした。



249:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:03:01.62 ID:C73jG/nL0

展示会も迫る中、そに子の受験の合否が出た。

そに子は見事俺と同じ大学に合格した。
そに子から電話があって
そに子「わたしやりました、やりました…うう…」
俺「あれだけ頑張ってたもんねえ」

もちろんどれだけ頑張っていたかは知っていた。だから自分のことのように
嬉しかった。本当に嬉しかった。



250:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:06:04.85 ID:C73jG/nL0

これでそに子も展示会に遊びに来れる。
それどころか晴れて同じ大学に通えるんだ。

もうるんるんだった。
展示会の絵も筆が乗って、いい感じに進んだ。
展示会が楽しみで仕方なかった。



252:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:11:40.33 ID:C73jG/nL0

そして展示会当日。
俺は去年の6月の展示会のようなヘマをすることは最早なかった。
力仕事もするし、部員たちとも男女問わずわりと打ち解けていた。

新部長「華丸よく働くねーw」
新部長は一個上の先輩でこれまた女性だった。
俺「まあ当然ですよねww」

俺にとって展示会はそに子会えた貴重な場だった。
だから展示会はすごくいい気分になれた。

しかし俺はこの展示会についてある一つのヘマをしたことを忘れていた。



253:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:14:40.40 ID:C73jG/nL0

俺は正月のメールで、
美保に自分の現在の大学と、部活を教えていた。
そして美保も今東京の大学にいるらしかった。

そして、ウチの部は割と前からこの日の展示をサイトで告知していた。

当然、この時の俺がそんなことまで頭が回っているはずがない。



256:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:27:29.73 ID:C73jG/nL0

展示会一日目がスタートした。
俺はシフトと関係なくフラフラ街へ出たり、ギャラリーに戻ったりしていた。
俺のシフトは午後だった。
そに子は午前中のうちに来るというので、俺もそれに合わせることにした。

そに子が来て、俺とそに子はギャラリーの近所の喫茶店でぼーっとしていた。
二人でお絵かきしたりして、
なんというか、嵐の前の静けさだったんだろう。
本当にあるんだね、静けさ。



257:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 22:30:16.74 ID:V7u3SwGI0

なんでもないようなことが幸せだったと思うんだよね



258:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:33:44.40 ID:C73jG/nL0

もう少しで正午、ってとこだったかな。
突然、俺の電話が鳴った。
俺「なんだ、遠藤じゃないか…アイツまた女子に怒られたのか?w」
遠藤「あー、華丸?なんかさっきからお前はいないかって聞いてくる
女の子がいるんだけどさー お前またなんか捕まえたのー?w」

俺「あ…マジか…ちょっとわかんないって言っといて…」
(いや…まさか…そんなはずは…)



259:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 22:35:15.74 ID:0sUgdEzMO

こええええええ



260:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:37:45.11 ID:C73jG/nL0

そに子「どうしたの…?」
俺「いや、わかんない…でもそろそろシフトだしとりあえず戻らないと、だね」

いや、だってまだ誰か分からない。
嫌な予感はしたけど、女性の知り合いが皆無というわけじゃない。
でも心当たりは一切なかった。
大丈夫…俺はそう思ってそに子とギャラリーに戻ることにした。



261:名も無き被験体774号+:2011/12/12(月) 22:37:48.74 ID:ze7E89Fc0

うええええ
怖すぎだろ



263:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:42:11.59 ID:C73jG/nL0

予感的中。
俺は頭が真っ白になった。
そこにいたのは紛れも無く美保だった。
少し大人びてはいたが。

さらにタイミングが本当に最悪だった。俺はそに子と二人でギャラリーに行った。
誰がどう見ても「一緒に来た」状態なのである。
まあその通りなんだが。



265:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:45:41.69 ID:C73jG/nL0

俺は明らかにおかしくなった。
膝が震えて、動悸が止まらないんだ。
いや、美保自体には最早恐れとかのたぐいは無かったんだが
「ここまで来ている」という状況が本当に怖かった。

なぜここにいるんだ?にわかには信じがたかった。
今だから冷静に分析して正月のメールとか、サイトの告知が…
とか原因は分かるが、
その瞬間はもう、何も分からなかった。



266:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:51:14.87 ID:C73jG/nL0

俺「こ、こんにちは…」
美保「久しぶりだね、華丸…、
そっちの子は誰?」
そに子「あ、そに子って言いますハジメマシテ…」

まさに修羅。と思った。。
一体どうなってしまうのか…
でもそうでもなかった。
美保「そっか、可愛い子だね…華丸と仲良くね」
そに子「あ、はい…」

普通である。



267:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:54:31.63 ID:C73jG/nL0

な、なんだ普通じゃないか。
俺はほっとひと安心した。
そう思うと急に馬鹿らしくなって、なんか楽になった。

俺がシフトで受付をしてるあいだ、そに子と美保はずっと一緒に展示を見たり、
近所の店にフラつきに行っているようだった。



270:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 22:57:56.42 ID:C73jG/nL0

俺のシフトが終わる頃、
美保「じゃあね華丸、頑張ってね。」
とだけ言ってあっさり去って行った。一体何だったのか。

俺もシフトが終わったので帰ろうと思って、そに子に電話した。

俺「そろそろ帰るんだけど、一緒にマックでも寄ってこうよ」
そに子「うん…」
やけに暗い声だった。



274:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 23:02:49.22 ID:zVjSiAs80

いやな予感。。。



275:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 23:02:52.19 ID:C73jG/nL0

俺「いやー腹減った。俺何たべよー。そに子は?」
そに子「………」
いやに静かだった。一体どうしたんだろう。

席につくと、そに子はカバンも下ろさなかった。
俺「へ…どしたの…?」
そに子「美保さんは…華丸さんの高校時代からの彼女さんなんですか?」
俺「は?」



276:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 23:03:31.24 ID:zVjSiAs80

え???



277:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 23:04:02.45 ID:hf2xHnDj0

みほ恐ろしす…



282:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 23:08:12.00 ID:C73jG/nL0

なんか知らんがボロボロ泣き始めてる。
そに子「今までわたし華丸さんとすごい仲良しだと思ってて…
私には華丸さんしかいないし、華丸さんもきっとそうだって勝手に」

いやいや、冷静に考えれば俺と美保が付き合ってないなんてすぐ分かるだろ。
どうしちまったんだこの子は。

俺「そんなの嘘に決まってるだろ…!?」

でもよく考えなくても俺はそに子に「好きだ」って一度も言ったことがなかった。
それどころか一緒にいるくせに付き合ってるって形でもなかった。
ただなんとなくいつも一緒にいただけなのだ。

気持ちをハッキリ伝えていなかったから、そに子がこの時こんな風に
なってしまうのは仕方のないことだった。



283:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 23:12:46.58 ID:C73jG/nL0

そに子「わたし今日は先に帰るね…」
そに子は泣きながら笑顔を作って店を出て行ってしまった。

俺「いや、ちょっと待てよ…!?」
ああ、一体どんなこんなことを言われたんだろう。

辛いのに我慢して俺と一緒にマックまで歩いてきたのだろうか。
俺はこの時そに子に気持ちを伝えていないことを本当に後悔した。



288:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 23:18:12.67 ID:C73jG/nL0

そに子はこの日電話に出ることは無かった。
ある種また異性不信になりかけた。

詰んだ。と思った。
と、同時に美保に対して恐れではなく怒りが湧いた。
展示会は明日もある。
もしかしたら明日も来るかもしれない。そこで、ガツンと言ってやる。
そう決心したが、内心はすごい怖かった。



295:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 23:23:42.63 ID:C73jG/nL0

二日目。
俺はシフトもないのにギャラリーの隅っこで体育座りしたりフラフラしたり
アイス食ったりして時間を潰していた。
やるせない気持ちでいっぱいだった。

きっといつかアイツが来る…。
すると、ギャラリーの奥でぼんやりしていた俺を呼ぶ声があった。



299:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 23:32:36.58 ID:C73jG/nL0

部活の女子「ちょっと~華丸の彼女とか言う人きてるよ~」
は?
そこには美保が立っていた。
俺は流石に怒った。普段からビビリだけど。

俺「お前がいつ俺の彼女になったんだ!?」
俺「そに子に何を言った!?正直に言え!!」

もう全力だった。でも声は震えてたと思う。
美保「いや…別に華丸はわたしの彼氏だから、近寄るなってカンジに…」
美保「まあ、そりゃぁ嘘ついたけどね」



304:名も無き被検体774号+:2011/12/12(月) 23:35:31.49 ID:AXQvbXf/0

今夜は寝られそうにないな。。。



305:名も無き被験体774号+:2011/12/12(月) 23:36:57.66 ID:ze7E89Fc0

続きが気になってのwktkとはこういう事を言うんだな
おにぎり食べたいんだな



306:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 23:39:23.82 ID:C73jG/nL0

俺「もう…分かった…。もう二度と俺の前に現れないでくれ…
お前も俺も、関わったら良い事ないんだよ。分かるだろ?」
美保「でも、わたしはそれでも…」
俺「その気持ちだけでいいから…俺たちはダメなんだ、ごめん」

どれくらいの時間、何を話しただろう。
美保も案外悟ったのか、俺が予想を逸して怒っていたからか、
静かになって帰っていった。

とてつもないエネルギーを使った気がした。



314:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/12(月) 23:53:59.69 ID:C73jG/nL0

全身全霊で美保を追い返した俺は、なぜだか泣きそうになった。
どうしたらいい?

そに子はもう2度と戻ってこないんじゃないかとも思った。
そに子に戻ってきてもらうためには、過去のことも、全部話さなければならないと思った。
話したところで信じてもらえるだろうか…?
離れたそに子の心を戻すためには、
やっぱり板尾の協力は絶対必要だった。

幸い、板尾とそに子は面識もあったし、普段からそに子に板尾の話をよくしていた。



319:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 00:03:44.02 ID:i8RmR7sP0

それからしばらくしてから、俺はそに子に電話をした。
もうすぐ入学式とかも近い頃だったろうか。なんとか入学式は
笑顔で一緒に過ごしたかった。

俺はそに子をファミレスに呼び出した。会って話すのが一番だと思った。
そこには板尾と、もうひとり、高校時代のクラスメイトである市原を呼び出した。
(彼は市原隼人に似ているので)
市原は板尾以外にトラウマのことや俺が絵を描いている経緯など唯一知っている友人だった。



321:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 00:08:21.20 ID:i8RmR7sP0

この市原、なぜ今になって登場するのかと言うと、
特にストーリーに深い絡みはなかったからだ。
彼は絵を描かないし、そに子や板尾との絡みもない。

この話のあいだにも俺は彼の家に泊まったり鍋を食べたり彼の自転車をパンクさせたりと
色々やらかしている。
でもそんな彼は東大で研究者を目指しているというナイスガイなのである。



323:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 00:11:56.03 ID:i8RmR7sP0

さらに、男だけで集まってみて、
板尾「いや、女の子一人に対して男3人もいたらビビるだろ…」
俺「あー…」

かくして市原は近所のゲーセンに格ゲーをやりに行ったのであった。
真面目な話、当日集まるまで気付かなかった。
市原本当にすまない。



327:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 00:17:03.35 ID:i8RmR7sP0

そして俺は、板尾と一緒に誠心誠意そに子に伝えた。
全て話した。
正直、この話自体するのもキツイのだが、女の子に伝えるというのも辛かった。

なんというか、板尾がいるおかげで話に説得力が出たと思う。

板尾「俺も相談を受けて…」
板尾がそう言う度にそに子は目に涙を浮かべた。



328:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 00:19:44.06 ID:i8RmR7sP0

そに子「ごめん…わたしそういう事全然知らなくて…
ひどいことした…ごめんね…」
そに子は案の定泣いてしまったのだけど、
何より誤解が解けて、本当に安心した。

全てを話すことが出来て、新しく心強い味方ができたな、とも思えた。
俺にとってそに子はますますかけがえの無い存在になった。



329:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 00:22:44.68 ID:i8RmR7sP0

店を出る。市原を呼び出す。
市原「もう終わったの?キスした?キスした?」
東大生だけどまったく空気は読まない市原。

すると、
板尾「まあなんだ…お前もしっかり決めとけよw」
板尾がニヤニヤして言った。
市原もニヤニヤしだす。



331:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 00:25:15.09 ID:NL0cAPG6O

市原可愛いなwwwww
そに子の誤解が解けて本当に良かった



333:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 00:25:29.42 ID:i8RmR7sP0

俺「あのそに子さん…」
するとそに子はハッとしたようにこちらを見る。
両者ともに顔面真っ赤だったろう。
そに子「はい…」

俺「好きです、付き合ってください…」

そに子「はい、よろしくお願いします。」



335:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 00:26:40.50 ID:1DnG3Tnb0

きたあああ!



336:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 00:28:49.63 ID:Bx0JYEVlO

俺も絵描こうかなあああああああ



337:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 00:32:12.17 ID:1DnG3Tnb0

これなら教授の誘い断らんで芸術学部行けばよかったああああああああ



340:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 00:41:07.25 ID:ffWNpI5VO

すまん、ちょっとパソコン落ちてしまったから携帯から。
名前のトリップが本人証明ってことで。
パソコンがスタートアップ修復とかになっちゃったからしばし待ってくれ。
この話はまだまだ続くよ、すまん。



341:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 00:42:07.43 ID:MvmiOFwsi

大学っていいなぁぁぁぁぁあ
俺専門んんんんんんんん
今無職ぁぁぁぁあああ



342:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 00:43:57.12 ID:Bx0JYEVlO

>>341
ワラタwww



344:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 00:51:45.77 ID:i8RmR7sP0

パソコン復活したよー!みんなごめん。
そして本当にみんなありがとう。嬉しいよ。
突然ブラックアウトしてホント焦った。

この話、まだもうちょっと先が長いけど、お付き合いいただければ。



345:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 00:55:43.46 ID:mdvoHyNT0

>>344
付き合おう!
男だけど!
そに子ちゃんは俺が説得するから
二番目でもいいから



346:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 00:56:39.81 ID:i8RmR7sP0

キタ!キタ!キタよこれ!
俺は心の中で連呼した。

俺はその場でそに子を抱きしめた。
そに子は小さい声で「ふふ」
って言った気がした。

この時、板尾たちはどんな顔をしてたのだろう。
ただ、市原の「マジかぁ~…」
って声は聞こえた気がした。
一体どんな感情なんだ、その言葉はw



348:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:00:40.31 ID:i8RmR7sP0

初めてまともに好きな人を抱きしめたと思う。
思えばあの時は有頂天だった。

板尾も市原も大笑いして「おめでとう!」って言ってくれた。
(市原は舌打ち混じりだったが)
本当に、嬉しかった、本当に。

でも、この喜びは、すぐにどっかいってしまう。



349:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:03:01.96 ID:W8iFGv99I

くそっ!!
大学にいるのに女の子と話してない(´Д` )
ぐぅー。



350:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:03:20.98 ID:Bx0JYEVlO

そに子かわええええ
市原はなんなんだよ東大生のくせにww

このままハッピーエンドだよな!…な?



354:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:05:20.19 ID:i8RmR7sP0

そに子の入学式も、俺はまるで親父のように見に行った。
それからは幸せな毎日だったと思う。

そに子は新入生で色々忙しくなるけど、俺が色々サポートして。
楽にとれる単位は?なんてよく聞かれた。

本当に板尾のおかげだったと思う。

俺は思っていた。
「ああそう言えば、去年のコミケで約束した、そに子と一緒に
板尾の美大に遊び行くって計画、いつやろうかな…」



356:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:08:32.30 ID:i8RmR7sP0

俺は近いうちに行こうと思っていた。

俺「いつがいいかなあ。」
板尾「4月のうちは忙しいでしょう。まあそに子ちゃんも落ち着いたら
ゆっくり来なよw美大の中を巡るツアーをしてやんよw」
俺「まあ言うて俺は何度も行ったことあるがww」
板尾「まあねっw」



357:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:10:19.93 ID:i8RmR7sP0

この後また俺にとっては辛すぎる事が起きる。

書くのも正直辛いんだが、頑張るよ。
これを書くために立てたようなスレだったしね。

あれは5月のはじめだったろうか。GWだもんな。



358:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:12:19.18 ID:NL0cAPG6O

なんか涙でそう(´;ω;`)



360:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:16:14.07 ID:i8RmR7sP0

板尾が、GWに地元の山道でバイクで自損事故を起こした。

帰らぬ人になってしまった。
俺は信じられなかった。高校の連中からメールやら電話が来る中で、
俺は段々と事態を飲み込んでいった。

一体、何が起きているというのか?
まったく分からなくなった。



361:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:18:20.17 ID:wTv1K6zv0

おいまじかよ・・・



363:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:20:29.44 ID:i8RmR7sP0

故郷の板尾の家に行って、式に出て、なんとなく何が起きているか分かった。
嘘だと思った。嘘なら良かったな、本当に。

俺が信じられないくらい泣きわめくので、多分周りにいる人ドン引きだっただろう。
どうしていいか分からなくなった。
俺はそれから一週間近く家を出なかった。
何も食えなくなって、ひげだらけになっていた。



364:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:23:06.28 ID:jVfBO6m00

やっと追いついた

まさかの急展開だなおい・・・



365:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:23:29.02 ID:i8RmR7sP0

思えば、色々な事が脳裏をよぎった。

一緒に合同誌を出すって約束していたこと。

そに子と一緒に板尾の美大を巡る予定だったこと。

そして、板尾にいつか追いつきたかった……

すまんダメだ今俺もボロボロ泣いてる。
少し遅くなるかも、すおまん



370:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:32:14.14 ID:i8RmR7sP0

思えば、俺は板尾がいなければ本当にダメだった
彼には感謝してもしきれない。
いや、もう感謝とかそんなんじゃなかったんだと思う。

アイツがいなかったら俺は、どうなっていたんだろう。
俺は板尾を見返すと同時に色々恩返しもしたかった。
いつか、いつか…と。

そんな存在が急に目の前から消えてしまった。
ポッと。突然、なんの前触れもなく。



372:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:38:34.67 ID:i8RmR7sP0

それからしばらくは夢を見ているかのようだった。
この歳にして親友を失うとは、思ってもみなかった。

スカイプを開いて、つい板尾にチャットを送りそうになってしまう。
そうすると、途方もなく虚しくなる。
これは、今でもたまにやってしまうんだが…



374:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 01:47:29.58 ID:i8RmR7sP0

ふう、みんなありがとう。
一旦シャワー浴びるから30分くらい時間空けるね。
眠い人は寝てください。付き合ってくれる方はよかったらお願いします。

見てくれてる人はどれくらいいるんだろ?
これでやっと全体の半分…もしかしたらまだ5分の2くらいかもしれない。
まだ続くけど、よろしくです。



376:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 01:49:49.69 ID:1EaWOpnn0

ほい、いっといで。
もうしばらくは起きてるし



379:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 02:04:21.93 ID:PwZirlHL0

ズキッときた…
言葉もないわ



389:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 02:34:36.70 ID:i8RmR7sP0

戻りました。
うわあ…みんなありがとう。こんな時間なのに…
なんとか完結まで持っていけるように頑張ります。
それじゃ、ぼちぼち再開しますね。



390:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 02:40:10.94 ID:6YPm6OEg0

ほんとすんません続きお願いします!



391:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 02:40:16.25 ID:i8RmR7sP0

俺はこの時、本当に人生で一番落ち込んだ時だったかもしれない。
そに子いわく、俺はほとんど笑わなくなったらしい。

辛くて辛くて、もちろんそに子に弱音も吐いた。
そに子は全部受け止めてくれた。
この時も、そに子の存在は大きかった。

でも、それ以上に俺を助けてくれた奴がいる。
それが、市原だった。



393:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 02:45:09.41 ID:i8RmR7sP0

恋人であるそに子が俺をケアしてくれたのは大きい。
それは俺にとって本当に生きる支えだった。

でもこういう時は得てして、男友達の支えというのも非常に重要だった。

メシとかを食べる気力を無くしていた俺を、市原は率先して自分の家に呼んだ。
そして市原鍋を振舞った。(白菜と豚肉をごった煮しただけ)
市原は高校時代3年間クラスを共にした男だった。

一緒にいると本当に落ち着いたし、楽だった。
市原の家に行くのは、自分の実家に帰るような感覚だった。



394:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 02:56:16.01 ID:i8RmR7sP0

市原の家に行くと、市原はよくオレに夢を語った。
市原「俺は獣医学を専攻して、動物の研究をするのさ…」
俺「へー…それって面白いのか…?」
市原「面白いとか面白くないとかではないんだよ。それが夢なんだから。」

夢。よくよく考えたら俺の夢ってなんなんだろうか。



395:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:05:18.13 ID:i8RmR7sP0

板尾と夢の話をしたことは一度しかなかった。
まだまだ19の少年だったから、目先の事に頭が一杯で、将来の話をする機会はあまりなかった。
その時板尾はポロッと言った。
板尾「俺は美術教師になる、絵の楽しさをダイレクトに伝えられるから」

俺は夢なんてまったくなかったし、「すげえなあ」
くらいで流してしまった気がする。
夢。美術教師。

この頃からそんなワードが俺の頭をかすめるようになる。



396:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:11:02.47 ID:i8RmR7sP0

6月になると、冬に板尾と一緒に申し込んでいたコミケの当落発表があった。
結果は落選。
なんということか。
俺はそに子と一緒に何か本を出すつもりでいた。

目的を失った気がした。
そこに、去年の冬のコミケで一緒にサークル参加した板尾の友人から連絡があった。



397:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 03:15:37.13 ID:gk095lTZ0

うおお追いついた…!
俺も漫画家目指して漫画アシしてる。読んでてすごく元気になったし楽しみにしてるよ!



398:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:15:57.05 ID:i8RmR7sP0

友人「コミケ、どうだった?」
俺「いや、落ちちゃったよ…ダメだった。」
友人「そっか…それなら前回と同じように僕のとこで本を出しなよ」

なんと、またしても板尾の友人が俺を助けてくれた。
これには俺とそに子は二人して大喜びした。
本が出せる。コミケで。



403:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:27:38.12 ID:i8RmR7sP0

こんな感じで、6,7月はぼちぼち大学に通いながら
コミケに向けた絵を描いていく日々だった。

そに子は一緒に合同でイラスト本を出すと言っていたが、まだ
デジタルで彩色が上手くできないという事で駄々をこねられた。
なので、結局はそに子はコピーの折り本を、俺は個人誌を出すことにした。
彩色以外は、綺麗な線を描くし、正直俺と対して変わらなかったんじゃないだろうか…

あと、書き忘れてたけどそに子は俺と同じ美術部に入部しています。
でも、特に部活で書くようなイベントがなかったので割愛してしまいましたw



406:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 03:33:17.42 ID:PwZirlHL0

いつか思い出話に出来るくらいに前向きになれたら
創作で板尾との過去を綴った作品描いてもええかもね
RIP



407:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:36:59.65 ID:i8RmR7sP0

俺は、今まで漫然とただ絵を描いていた。
ずっと描き続けて、いつかイラストレーターみたいになれたら…
そんな甘美な夢を見ていた。

でもこの頃から明らかに意識は変わっていたと思う。
よく分からないけど、コミケのイラスト集の絵はただひたすら
集中して描いていた。

それでもたまにそに子から絵の相談を受けたりするので、そんな時は
楽しく絵チャとかやったりして、マッタリ絵を描くこともあった。



408:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:43:19.93 ID:i8RmR7sP0

板尾の死は、よくも悪くも俺を変えた。
もう自信作を描いても、「いいじゃんそれ!」
と言って笑う板尾はいないんだから。

コミケの原稿も一段落した8月の初旬、俺は美術部の合宿に行った。もちろんそに子も一緒に。
夏合宿。まあ、楽しいレクリエーションだ。

みんな夜通し語り明かしたりもする。
俺はこの合宿で相談したい相手が居た。



409:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 03:43:54.09 ID:TsjlM4fB0

お前の絵が早く見たい。
お前の優しさとか人格がこの文章からよく伝わってくる。きっといい絵を描くんだろうなって思った



411:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 03:58:59.57 ID:i8RmR7sP0

一個上の部長。
部長は、芸大受験の経験もある、かなりアーティストな人だった。

そう、俺はこの時決心していた。
東京学芸大の中等美術科に行って、美術教師になってやる…
そのためには大学を辞めることや仮面浪人もいとわなかった。
夢が、見えた気がした。

芸大や美大受験とはさすがに勝手が違うが、それでも部長の意見を聞いてみたかった。



412:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 04:00:57.91 ID:i8RmR7sP0

とりあえず、もう4時になってしまったので一旦今日はここで休憩にします。
見てくれた人、本当にありがとう。
また明日の夕方~夜あたりに続き書きます。落ちたりしないよね?



442:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:02:42.36 ID:P1VUjXiJ0

みんなこんにちは。
こんな時にアクセス規制くらって、どうしようかめっちゃあわてた。
なんとか2ちゃんビューアを導入して戻ってきた。

ここまで読んでくれてありがとう。これを読んで何か感じてくれたなら嬉しい。
時間があったら是非最後まで付き合ってください。



443:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:10:18.61 ID:P1VUjXiJ0

今日も、ぼちぼち続きを書いて行きたいと思います。
話は折り返し地点くらいまできました。



447:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 17:14:15.92 ID:smPPWPLm0

おかえり!
続き待機!



448:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:17:03.74 ID:P1VUjXiJ0

夏合宿。
みんな浮かれ気味である。
俺たち美術部一行は、とある片田舎の避暑地に行った。

バスでは、俺とそに子は隣に座らなかったが、
それをひたすらにブーイングされた。
なんだかんだで遠藤と仲よかった俺は、何故か遠藤の隣だった。

遠藤「今年の一年女子をこの合宿で見極める…」
俺「がんばれよ」

でも遠藤は途中からバス酔いしたので静かで楽だった。



449:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 17:17:48.13 ID:GD7pbpce0

21歳…同い年か。くそっ俺は一体何をしてるんだ…
俺も絵を描いてる。これから先辛いことはたくさんあるだろうが俺も描き続けるわ



451:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:23:52.54 ID:P1VUjXiJ0

夏合宿では海に行くか高原に行くか半々くらいだった。
女子が多い部活。
俺は正直海に行きたくて仕方なかった。

でも行き先は高原だった。
俺「着いた~バスって楽しいねえ修学旅行みたい」
遠藤「水…水…」

コテージ?ログハウス?なんて言うんだろうそんなとこに皆で泊まる。
でも管理人の老夫婦がいたし民宿にも近いのかな。



452:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 17:28:27.22 ID:wOY4TWvF0

遠藤www



453:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:30:06.93 ID:P1VUjXiJ0

俺「すごいなここ、バドミントンとかバスケ、テニスで自由に遊べるのな」
遠藤「バスケしようぜ~」

近くには牧場もあったり、自由にスポーツできたり。
緑が綺麗でとてもいいところだった。

そに子「華丸さんバドミントンしようよ~」
俺「遠藤、そういうことだから。」
遠藤「いやいや混ぜてくれよ」



454:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:34:43.77 ID:P1VUjXiJ0

この時ばかりは青春ってやつだったかもしれない。
今思い出すとむずがゆい、でも楽しかった。

明るいうちはみんなでバドミントンとかして、
近くの小川に行って裸足で入って足怪我したり。
食べれる野草を見つけてみんなで騒いだり。

夜には肝試しでお化け役になって樹の枝に腕ひっかけてすりむいたり。

けっこう怪我したwでも楽しかった。



456:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:44:21.59 ID:P1VUjXiJ0

夜。自由時間。

夕飯も終わってみんなマターリタイムである。
俺は建物の外でまだ吸い始めたばかりの煙草を吸っていた。

そうすると、部長がきた。
部長「くさいよ、それ」
俺「あ、すいませ…部長相談があるんです。」

部長「何よw 改まっちゃってw」
俺「俺大学多分やめます」



457:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:48:47.53 ID:P1VUjXiJ0

部長「何トンチンカンな事言ってんの?」
俺「いや、だから…俺は美術教師になりたいんですよ、はい…」

部長「初めて聞いたな」
俺「そのためには、今の大学じゃ絶対無理じゃないですか。
やめて、今から美大は厳しいですから、学芸の中等美術科に…」

部長「うんうん、分かった分かったちょっと待って。」
俺「はい…」
部長「華丸は中高で美術部の経験があった?」
俺「いえ、まったく…高校では一度も美術の授業すらなかったです…」



459:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 17:56:43.53 ID:P1VUjXiJ0

部長「じゃあ、美術の先生がどんなことするか、どんな人かも分からないんだね」
俺「まあ…そうなります…」

部長はいつになく真剣だった。部長はスタイルがよくて、
ハキハキしていて、出来る女性って感じだった。だから尚更気迫があった。

部長「華丸がなんで急にそんなこと言い出したのかは分からない。
まあ、なんとなく察しもつくんだけど…
よく考えた方がいいよ。そんなに甘いもんじゃないよ。」
俺「で、でも…」

部長「こんな言い方してごめんね。でももしそれで大学やめて美術の先生になれなかったら?
なれたとして、一生続けられるかな。」

部長は芸大受験に何回か失敗してからうちの大学に来ていたから、
学年一個上とは言え、歳は離れていた。




460:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:06:26.23 ID:P1VUjXiJ0

俺はもしかしたら、「頑張れ」とか「応援してる」とか
そういう言葉を期待していたのかもしれない。

学芸の受験自体は、実技がそこまでできなくても
勉強をめっちゃ頑張ってセンターでいい点をとれば可能性はあるかもしれない
ということも分かっていた。

だから部長みたいな人に背中を押して欲しかったんだろう。
俺は落ち込んだ。
一歩踏み出す、きっかけを与えて欲しかった。



461:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:13:38.06 ID:P1VUjXiJ0

そんなこんなで、期待していた夏合宿は終わりを迎える。
俺はここで心機一転するはずだったのに…と落ち込んでいた。
完全に他人に頼っていたと思う。

でも俺は挫けなかった。
夢を追えなかった板尾のことを思うと、美術教師は諦められなかった。

この時の俺は本当に取り憑かれたように美術教師になる、って言ってたんだけど
それが本当の自分の気持ちだったのか、
板尾に対する自分の想いだったのかは、未だによく分からない。



462:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:20:28.64 ID:P1VUjXiJ0

合宿が終わると、
助けを呼ぶ声があった。
コミケで本を置かせてもらうことになっている板尾の友人だった。

友人「華丸君、今ヒマかな?原稿がやばいんだよ、手伝ってくれないかな…」
俺「おお、いいよいいよ。そんなにやばいんか。」

夏のコミケの締め切りギリギリ。まさに友人は修羅場状態であった。
そして、この一本の電話が俺にとって大事な分かれ道だった。



463:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:26:23.55 ID:P1VUjXiJ0

俺は美大近くの友人の家に行った。

友人「ごめんねー手伝わせて」
俺「いいよいいよーそれより聞いて欲しいんだけど」
俺たちは作業しながら会話をした。

友人「どうしたの?」
俺「今から、学芸行って美術教師になりたい、それって難しいのかな」
友人「そんなことないんじゃないー?」

軽い。予想外の反応だった。

友人「俺の友達で学芸とか教育系の美術科?受けてここに来た子とかいるよー」
俺「え、本当に?」



464:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:32:19.08 ID:P1VUjXiJ0

友人「その子、板尾とも仲良かったよ?もしかしたら会ったことあるんじゃない?」

俺は記憶の糸をたぐりよせた。確かに去年はよく板尾の美大に潜り込んで、
色んな人と関わった。

俺「なんて子?」
友人「石田だよ、石田。」
俺「あ、俺その子知ってるよ……」

その子は石田ゆり子にちょっぴり似ているので石田と呼ぶ。



465:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:42:41.74 ID:P1VUjXiJ0

そもそも、石田さんとはそに子と初めて会う前から面識があった。

大学1年の5月くらいにもう会っていた気がする。
板尾が美大の連中を色々紹介してくれた時に、その中にいたって感じだった。

まだまだ異性に距離を置いていた時だったし、
もちろん連絡先も知らなかった。会ったことも4,5回あるくらいだった。

美大に遊びに行った時に、構内で出くわせば、「あ、ども…」くらいの感じだった。
それでもだんだん慣れて話すこともあったが、とにかく「板尾ありき」の存在だった。

板尾が亡くなってからは会ったことはなかった。



466:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:46:41.49 ID:P1VUjXiJ0

ただ俺は板尾が紹介してくれた美大の連中のことはほとんど忘れていた。
この友人を除いて。

顔くらいは覚えていたが、名前までハッキリ覚えている人なんてほとんどいなかった。
ただ、俺は石田さんのことは覚えていた。

俺は石田さんを初めて見た時から、なんとなく「可愛い」とは思っていた。
好きとかそんなんじゃなく、外から傍観する感じで。

だから記憶にも割と残っていたのだ。



467:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 18:51:17.51 ID:P1VUjXiJ0

友人「じゃあ原稿一段落したら、美大に来なよ。
石田も呼んで、話聞く?そのついでにさ、ほら、美大の中色々見たりする?」

俺「それはいい考えだね。じゃあそに子も連れてくるよ。」

友人「きっと彼女も色々話聞きたいかもねwできるだけ友達呼ぶよw」

そう、板尾の友人は、俺とそに子と板尾が美大巡りの約束をしたことを
知っている唯一の人間だった。
あの時の計画が、こんな形で実行されるとは。

でも俺は楽しみだった。そに子もきっと喜ぶだろう。



468:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 19:01:08.11 ID:X24CDaMj0

みてるよー



469:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 19:13:35.18 ID:P1VUjXiJ0

書くの遅くてゴメン…

お盆にあるコミケの後にするか、前にするかで、悩んだ。
でも善は急げだって言って、コミケの前に行くことにした。

そに子にも話すと、
そに子「え、今なのww でも嬉しい、すごく」
と言ってくれた。そに子も、板尾の死にはショックを受けていたから。

そに子「どうしよう。スケブ持ってくよね?あとは…」
そこまでワクワクしてくれると、こっちも嬉しい。
良かった。

そして美大に行った。俺はそに子と二人で向かった。
正門の前に友人が立っていて手を振った。
友人「こっちこっちー」



470:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 19:18:46.94 ID:P1VUjXiJ0

友人「みんな来てくれるかと思ったけどねーwさすがに夏休みだし予定がw
でも石田は来てくれたよー良かったね」
石田「久しぶり!」
二人はニコニコしてなんだか楽しそうだった。

俺「久しぶりだね。今日はありがとう。」
自分でも分かるくらいもう女性に対しての苦手意識はなくなっていた。
俺はとにかく早く学芸受験の相談も聞いて欲しかった。



474:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 19:26:55.44 ID:P1VUjXiJ0

友人「長期休暇中だからねー、ほとんど建物の中入れないけど
 色々見てまわろうかー」
  
 美大の中を歩いていると、色々思い出した。
 よく板尾に案内してもらった。
 一緒に歩いた、去年のコミケのことも思い出された。
 この計画も本当は…なんて思った。
  
 なんだかとっても辛くなった。
 そに子がずっと笑っていたのが救いだったかもしれない。
  
 板尾のおかげでこの子にも会えたし…
 そんな感傷モードに浸っているうちに美大探訪は過ぎていった。
 



475:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 19:33:07.89 ID:P1VUjXiJ0

支援ありがとう。ごめんなんだか書くの辛くて少し遅くなるかも。許してくれ。


友人「ほんじゃ、そろそろゆっくり話とかもしたいし、
俺の家に行ってゲームでもやろうよ」
友人はゲーム好きだった。
確かにゆっくり話もしたいとこだったし、家に行くってのはみんな賛成だった。

石田「あたしなんか作るねー」
そに子「わ、わたしも…手伝います…」

そに子は実家暮らしなのでそこまで料理はできなかった。
俺は、女性陣は可愛いなあ、なんて心のなかで思っていた。



477:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 19:39:47.02 ID:P1VUjXiJ0

友人の家につくと、石田さんが料理を作った。
そに子も少しは頑張ったらしいw
美味しかった、なんか感動した。
同級生の女の子が作った料理…

その後そに子は友人とゲームを始めた。
俺は色々と石田さんに話を聞くことにした。



478:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 19:52:06.23 ID:P1VUjXiJ0

俺「実は自分、学芸に行って美術の先生になりたくて…」
石田「らしいね。聞いたよ。あたしも受けたよ~学芸」

石田「現実的に考えるなら母校の高校の美術の先生とかにも相談したら…?
あたしも高校の時は受験のために美術の先生と仲良くなったよw」
石田「田舎だから予備校も長期休暇とかしか行けなかったし」

俺「なるほどなあ。」

この日話していて分かったんだが、石田さんと俺は
地元が一緒だということも分かった。これには本当に驚いた。



479:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 19:56:30.34 ID:P1VUjXiJ0

石田「華丸君はきっと頭いいんだから、まず勉強頑張ればセンターで差がつくし
受験は大丈夫。あたしは応援しちゃうな~」

これが美大生の思考なのだろうか。迷わず応援してくれた。
俺は自分の補って欲しいところを補ってくれるような、
そんな存在が現れた気がした。

石田「華丸君絵を描くの好きなんだね。板尾も上手かったもんね」
話は板尾の話にもなった。

同じ地元に受験、板尾の話…共通の話題が尽きることはなく、
石田さんとは本当に長い時間話している気がした。



481:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:02:22.31 ID:P1VUjXiJ0

その日はそんな感じで過ぎた。
そに子に帰り道でちょっとすねられた。ずっと話していたせいだ。
そに子「でも学芸受験のこと相談できる相手できてよかったね。
わたしはそういうの全然分からないし…」

あんたはエライ子だよ。

そして、このすぐ後にコミケが来る。
楽しみ半分、不安半分。
去年のことが懐かしく感じられた。



482:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:05:26.39 ID:P1VUjXiJ0

この時までは、本当に失うものが何もなかったんだと思う。
夢を追おうが、捨てようが、自分の選択次第だし、自由だった。

この時までの自分はある種幸せだったなあと思う。
悩んで、苦悩して。

色んな人に迷惑かけてみて。



483:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:09:11.22 ID:P1VUjXiJ0

そして、夏のコミケが来た。
夏コミは青春って感じがして、ほんとうに楽しい。
あくまで個人的感覚だが、若さと情熱で溢れている。

俺は友人のスペースで、そに子と友人と一緒に、本を売った。
前回同様、マッタリとだが本ははけてくれた。

すると、予期せぬ人が訪ねてきたのだ。



484:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:13:37.25 ID:P1VUjXiJ0

来たのは、石田さんだった。
石田「よ、頑張ってるねー」
友人「おっすー」

俺「あーおつかれー」
正直、ドキッとしてしまった。
純粋に、来てくれたことを嬉しく感じた。

この時、そに子はどんな風に思っていたんだろうか。



485:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:16:48.03 ID:P1VUjXiJ0

その後は特にイベントもなく
コミケ終わった後
石田さん含めて俺たち4人でメシを食べに行った。

俺は、その最中も石田さんに受験関連のことを聞き続けた。
石田さんに少し惹かれていたのか、
「美術の先生のなるんだ」ってことばかり考えていたのか。
両方だったと思う。

そに子はどう思っていたのだろうか。



486:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:19:37.07 ID:P1VUjXiJ0

その後、定期的に石田さんから連絡がくるようになった。
俺はそれが悪い気はしなかった。
もちろん、そに子への好意は全然生きていたし、
石田さんとの関わりは自分でもよく分からない感情だった。

でも9月に入ると、そんな寝ぼけたことを言ってられない
大きな壁にぶち当たる。



487:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:23:24.35 ID:P1VUjXiJ0

母の体に癌が見つかった。
元々俺の家は片親だった。
母と、社会人の兄。稼ぎ手も二人いたので、経済的に困ったことはなかったが。

兄に一度帰ってくるように言われた。
母は入院したらしい。

「これからどうなるんだ?」
「母さんは、どうなるんだ?」
混乱した。とりあえず実家に帰ることにした。



489:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 20:26:17.35 ID:AxZ3KAvM0

最終的に救われるのかと思いながら読んでるけど
なんかドキドキするわ



490:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:29:40.85 ID:P1VUjXiJ0

母は手術をした。
手術は上手くいった。しかしリウマチを発症した。
リウマチとは、手足がかたまって、時期に動かなくなる病だ。
それに進行の早いものだったらしい。

兄「母さんはなんとか大丈夫だったけど、分かってるよな?」
俺「うん…もう働けないし、段々世話も必要になる、ね…」

兄「お前大学辞めるとか言ってたけど」
兄「今まで俺たち散々母さんに迷惑かけてきたんだから」

俺「……」

兄「諦めろ。母さん生きているウチに自立して、立派なとこ見せるんだぞ」

この時俺は号泣していた。
どうしてこんなことになってしまったんだろう?
自分が世界で一番不幸なんじゃないか、って思うくらいだった。



491:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:36:48.85 ID:P1VUjXiJ0

夢が敗れた気がした。
夢を追いたい、でも今から大学に一から行き直したら…
母が生きてるうちに、立派な社会人になりたい…

母にはどれだけ迷惑をかけたか。
幼い頃から、俺たち兄弟をずっと育ててくれた。
いつか恩返しをする。

そして、俺は人一倍人の死に敏感になってた。
板尾を失った時のことを思い出して、どうしようもなくなった。

諦める。そして真面目に就活して、絵は趣味にする…
そう、決心した。



492:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 20:38:03.72 ID:/qSLdoGG0

波乱万丈すぎわろた・・・



493:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:44:14.84 ID:P1VUjXiJ0

母が退院するまでしばらく俺は実家にいて、
兄と協力して車を出したり、病院に行ったりしていた。

地元にいると大学の友だちと会えなくて辛かった。もう授業も始まっていた。
でも、俺はこの「諦める」と決心した時、
まず最初に石田さんにメールした。泣きながら。

特に深い意味はなかったと思う。今まで散々学芸受験の相談にのってもらったし、
諦めるなら、はやくそのフシを石田さんに伝えるべきだと思った。
もちろんそに子とは電話とかたくさんしていたし。

俺は石田さんに細かい経緯とかも伝えた。
今思えば、石田さんにはそんなに込み入った事情まで言うべきじゃなかったって反省してる。

でもこういう時って、本当に誰かに話したくなるんだよな。
俺辛い、辛いんだよ~って。



494:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 20:51:17.46 ID:9RSbwjTk0

あぁ…あぁ…(´・ω・`)



495:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:54:00.76 ID:P1VUjXiJ0

話ももう佳境です。八割くらいきたと思います。
今日中に終わることを目標にします。ごめん、長くて。


それから数日経った日の夜、石田さんから、
「〇〇駅に来て」とだけのメールが来た。
その駅は俺の実家の最寄りだった。

駅に行くと、石田さんが笑ってベンチに座っていた。
田舎の駅だから、平日夜でも人はまばらだった。



497:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 20:58:11.18 ID:P1VUjXiJ0

石田「ちょうど私も地元に帰ってきたからさー、元気かなと思って」

明らかに嘘だった。こんな時期に、大学生が帰郷なんかするか?
まあ本当に何かあったのかもしれないが。

俺「そうなんだ」
石田「直接話したかった…元気かなって。無理してるんじゃないかって」
石田さんはきまり悪そうに笑った。

なんて言ったらいいか分からなかった。
上手く話せなくて何時間くらいそこに座っていたんだろう。



499:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 20:59:20.44 ID:6aQ8JacdO

波瀾万丈だけどかなりのリア充だな
ちょっと絵を書いてくる



506:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 21:07:46.30 ID:P1VUjXiJ0

石田「あたしはね…華丸くんが好きなんだ…」

嬉しいことである。とても嬉しい。
でも、今言わないで欲しかった。もっと別に仲良くやっていく方法もあったはずだ。

俺「ありがとう…でも…俺は…」

石田さんは強かった。表情一つ変えなかった。覚悟もしていたのかな。

石田さんは笑って、
石田「じゃあさ、儀式しようよ!」
と言い出した。

俺「儀式…?」



509:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 21:14:21.47 ID:P1VUjXiJ0

石田「わたくし、石田ゆり子は、博多華丸のことが、大好きです。
良かったら…付き合ってください!」

俺「ありがとう、ごめんなさい…」

石田「ふられちゃった」
石田さんはニシシとばかりに苦笑いした。

正直、その時俺は気持ちが持って行かれるんじゃないかと思った。

石田「恋人がいる人に告白するなんて、あたし卑怯だー」
石田「そに子ちゃんはいい子だもんね、あたしもがんばる」

何も言えなかった。



510:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 21:17:07.12 ID:YnbYO5KlI

儀式なんて、余裕でエロい事しか思い浮かばない



511:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 21:17:31.10 ID:P1VUjXiJ0

石田「華丸君は頑張りすぎないでね」
石田さんはそう言って改札をくぐっていった。

最後まで何も言わなかった気がする。
遠くで手を振られて、ただ振り返すしかなかった。

あまりに叙情的な景色だったから、ハッキリと覚えている。
自分でもなんだこの状況?ってなった。

心にぽかんと穴が開いたみたいだった。



513:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 21:19:38.74 ID:6aQ8JacdO

俺石田ゆり子大好きだからマジでうらやましいわ



514:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 21:20:00.99 ID:OdZOWMJl0

俺も辛いわこんなの



515:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 21:21:11.09 ID:P1VUjXiJ0

さて、このタイミングで申し訳ないのですが、ちょっと晩飯を食べてきます。
なので30分ほど時間あけて、また再開しますね~



516:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 21:32:55.46 ID:OdZOWMJl0

おk
待ってるよ~



517:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 21:43:56.57 ID:J+ORkLJU0

このスレくる度に泣いてる



519:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 22:11:21.17 ID:P1VUjXiJ0

晩御飯からもどりました。
正直、こんなにたくさんの人に自分の話を
見てもらえるなんて思ってもいなかったです。
ここまで続けるのは大変でしたが、みんなの応援のお陰です。

あと少しになってきましたが、最後まで付き合って頂けたら嬉しいです。



521:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 22:20:50.22 ID:Wl6eAC7i0

おかえりー
ゆっくりでも見てるよ



522:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 22:22:11.24 ID:EcMflnFy0

泣きそうだよ

ゆっくりでいいから投下してってくれ



526:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 22:45:45.48 ID:P1VUjXiJ0

石田さんとの時間は、夢を見ているかのようだった。
まるで、中学生に戻ったかのような、そんな青臭い自分を感じた。

家に戻ると兄が玄関にいた。
兄「女か。」

昔から兄は鋭かった。
母の病院に行かない夜は何があってもいいように
一緒に家にいて、二人で格ゲーをやっているのが普通だったからだ。
遅い時間に帰ってきたから不審に思ったんだろう。

兄「地元の友達にでも会ってきたのか」
俺「ま…そんなとこ…」



528:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 22:52:33.79 ID:P1VUjXiJ0

俺は、次の日かかりつけの眼科に行った。
思えば、小さい頃はよく母と病院にきたものだ。
この眼科もそうだった。

俺は診察の時先生に言った。
俺「実は母が…」

先生「そんなことがあったのか…華丸君が小さい時から知ってたからなあ
辛いけど、今はそばにいてあげて」

先生は初老のじいちゃんだ。
これが田舎の地元のいいところだ。

地元に戻れば、家族みたいな人がたくさんいる。
俺は元気をだそうと思った。



529:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 22:58:29.16 ID:P1VUjXiJ0

このじいちゃんにも、半年に一回の受診でしか会わないのに、
こうやって心配してくれるんだ。
石田さんだって、心配だったんだろう…

母のことで鬱屈としていた俺は元気をだそうと思った。

じきに、母は退院した。癌の方は一旦おk、ということになったようだった。
これからは自宅で、クスリで再発防止の抗がん治療をするようだった。

しかしリウマチがあったので、しばらく自宅で療養することになった。

あまり大学を休み続けるわけにもいかなかったので、俺は実家から戻ることにした。



530:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 23:05:12.39 ID:P1VUjXiJ0

久しぶりにもどってきた。
大学、絵、何もかもが久しぶりに思えた。

そに子がすごく心配してくれた。
なんだかほっとした。

だんだんと、日常をとりもどしていく気がした。
できる限り、実家のことを思い出さないようにしていた。

逃げていたのだろう。向き合うのが辛かった。



531:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 23:08:14.48 ID:P1VUjXiJ0

目的を失った俺はどうしたらいいか分からなかった。
夢…就活…
この頃絵を描くのがすごくつまらなくなった。

なんで描いているんだろう?
分からなくなった。
板尾がいたらなんて言ってくれたろう。
なんでアイツはあんなに絵を描くのが好きだったんだろう。

俺は分かって気になっていたが、分かっていなかったんだ。



534:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 23:14:57.61 ID:P1VUjXiJ0

そもそも、俺が絵を描くきっかけだったのは板尾。
板尾がいなくなって、俺は板尾の代わりに夢を追うような、
そんな気持ちで居たのかもしれない。

異性不信を克服するため、また恋ができるように、落ち込んでいた俺を板尾が
変えるために絵を薦めた。

今ではすっかり異性不信もなくなったし、
そに子がいた。

絵を描く意味が分からなかった。絵を描く必要があるのか。
そう考えだした。



535:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 23:18:46.30 ID:P1VUjXiJ0

そんな俺に、そに子が言ってきた。
そに子「冬のコミケの当落、もうすぐだね~」

コミケ…?
俺は夏にそに子と一緒に冬コミの申し込みをしたのだった。
と言っても、そに子が張り切っていたので、全部そに子に任せていたのだが。

俺「コミケ…ね。一人で本出すってのでも…いいんじゃない?」
そに子「…え?」

俺「いや…絵を描ける気がしないし、本出せないわ、絶対」



536:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 23:23:25.78 ID:P1VUjXiJ0

そに子「絵…描かないの?」
俺「もう、描かないかもね…わかんね」

そに子「そんなん嫌だよ…そんな華丸さん嫌だ」
俺「なにが?」

そに子「なんで…絵楽しいって言ってよ、一緒に楽しく絵描こうよ」
俺「うるさいなあ、お前に何が分かるんだよ」

そに子「なんで?急に?絵描くでしょ?描かないなんて言わないでよ!」
俺「描かないもんは描かないんだよ、大体こんなもんなあ…!」

珍しく、大喧嘩だったと思う。



540:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 23:33:35.79 ID:P1VUjXiJ0

そに子は泣きしだした。
そに子「どうしちゃったの…嫌だよ、こんなの嫌だ…」

俺「俺だって分からないんだよ、なんで絵を描くのか。
絵を描いて夢を追う、それが全てだったんだよ。それがなくなった今意味なんて…」

そに子「絵を描くことに意味なんているの?楽しくて描いてたんでしょ?」
俺「板尾がいた時は楽しく描いてたよ…わかんねえんだよ俺も…アイツがいないと、描く意味ないんだよ…
夢を追ってれば俺の中で板尾がい続ける気がしてたんだよ…」

そに子「そんなの全部言い訳にしか聞こえないよ!そもそも、板尾さんの夢は板尾さんだけの夢じゃないの!?」

そに子は珍しく感情むき出しだった。

そに子「逃げないでよ!現実から!受け止めてよ…夢を諦めたって、
華丸さんが絵を描き続ければ板尾さんは生き続けるでしょ!?板尾さんが華丸さんに絵を教えてくれたんでしょ!?
そこで描くのやめてどうするの……?」



541:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 23:35:28.76 ID:X11mg6lS0

そに子ほんとにいい子だな...
大事にしてやってくれまじで...(´;ω;`)



542:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 23:37:38.68 ID:P1VUjXiJ0

もう、ボロボロだった。

そに子「それに、私は華丸さんの絵が好きだもん…
わたしだけじゃないよ、きっと、今まで本を買ってくれた人も、PIXIVを見てくれる人も…
そういう人たち、みんな寂しい想いするんだよ…」

最早聞き取れないくらいに泣いていた。

俺「……」

俺はあっけに取られて、何も言えないでいた。



543:名も無き被検体774号+:2011/12/13(火) 23:44:18.29 ID:RYEBXq840

ちょっ、そに子があまりにいい人すぎて涙出てきそうだわ。



544:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 23:46:47.23 ID:P1VUjXiJ0

そに子がこんなに泣いている。
俺は、俺は……

そに子「絵を描くのは…好きでしょ?」

俺「……好きに決まってるだろ」

絵を描くのは好きだ。だから今までずっと描いてきた。
下手なりに、もがきながら、見てくれる人たちがいたし、
ひたすら描きたいものを描いてきた。

思えば、絵を通してどれだけの人に出会い、どれだけの人に支えられたのか。
板尾もそう、そに子もそう、遠藤や石田さんだってそうだったろう…。
コミケで俺の本を買ってくれた一人一人の顔も覚えてる。
あの日、完売した俺たちに拍手をしてくれた隣のスペースの人たちのことも…


気づけば俺もボロボロだった。

俺「…描いて…みるわ…」

そに子「わたしより可愛い女の子、描いてよ」

俺「…それはどうかな…w」

泣きながら笑っていた。よく分からなかった。



545:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 23:53:00.75 ID:P1VUjXiJ0

俺は、この年の冬コミに全力でぶつかることにした。

と言っても、普段通りに描くだけだったのだが。
普段通りのページ数で、普段通りの絵で、普段通りのイラスト本。

一緒に一冊作ろうと思っていたが
俺はこの一件で怒られたので

そに子「どっちが早く完売するか勝負する!」

と言われて結果個人本を描くことになった。
頑張りつつも普段通り。

それが楽しかった。絵を描くのが、楽しかった。



547:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/13(火) 23:56:49.11 ID:P1VUjXiJ0

俺は板尾に昔言われたことを思い出していた。

「理想の女の子を紙におとしこめよ」

やっぱりそれが楽しかった。そに子には悪いが。

吹っ切れてからは、絵を描くのが楽しくて仕方なかったなあ。
本当に楽しかった。

でも俺にはもう時間がなかった。



549:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:01:16.94 ID:sGeGsGTv0

このままいけば今日中に完結できそうです。みなさんよかったらお付き合いください…


そして、晴れて冬コミの日がやってきた。
俺もそに子も、もうワクワクが止まらなかった。

もう、存分に楽しんでやろう、そう思ってた。

そに子「ひえ~…相変わらずすごい人…」
俺「毎回サークル入場だと、なんか申し訳なくなるな…w」

ビッグサイトのやぐら橋前には、相変わらず信じられない数の人がいた。



550:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:05:24.26 ID:sGeGsGTv0

コミケは、始まる前も楽しい。
そに子も俺も、相変わらず自分の本を見ると、
興奮が止まらなかった。

知り合い、憧れの作家さんに挨拶に行って、
前回のコミケの話とかしたり。

見本誌提出するのにテンパったりw

始まる前のワクワク感、ってのは言葉にできないものだ。



551:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:10:56.19 ID:sGeGsGTv0

「これよりコミックマーケットを開催いたします…」

ぱちぱちぱち…!

そに子「ああ、始まった…」
そに子は相変わらず顔真っ赤だった。

俺「たまんないよな…この瞬間」

そに子はオンデマンドフルカラーで30部、俺もオンデマンドフルカラーで50くらい。
決して冒険をした部数ではなかった。

「新刊一部、ください」

この言葉を聞くたびにこう、体が熱くなるのを感じた。

「ありがとうございます!!」
絵を見てくれる人に実際に向き合って本を渡す喜び。

この日そに子も俺もそれを肌で感じた。
去年の冬コミくらいの感動が、あった。



552:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:14:39.46 ID:sGeGsGTv0

「絵を描くのって楽しい…」

「描いてて良かった…」

そんなことを感じていた。

そに子も俺も、午後に本は完売した。

そに子「ど、どうしよう~」
そに子は案の定半泣きだった。

俺「頑張ってよかったね。」
これは去年の冬に板尾が言っていたことだ。

そう、頑張って良かった。絵を描いててよかった。

笑ってはいたが俺も泣きそうだった。
これからもずっと、絵を描くぞ…

ただ、俺にはもう時間がなかった。



553:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:19:53.51 ID:sGeGsGTv0

俺は、去年と同じように、冬コミが終わったら実家に向かった。

母のこともすごく心配だった。
母は、手は動かしにくそうにしていたが、案外元気そうで安心した。

良かった。
俺「母さん、俺絵めっちゃ頑張ってんだぜ。たくさんの人が見てくれてさ。」
母「そりゃよかった…。母さんこんなんだから、好きなことあんまりできなくてごめんね…」

俺「そんなことないよ!!絶対に、ないから。俺は大丈夫だからw」

母「はいはい、じゃあちゃんと就活しなさいねw」
俺「えー…w」
兄「俺がしごいてやるよw」

俺はこの時幸せだった。
この先、平凡に、でも幸せに生きていける、そう思った。



555:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:24:19.64 ID:sGeGsGTv0

そに子もいたし、家族も仲良かったし、絵も益々楽しくなってきた。

最高の正月だなあと思った。
三が日が過ぎて、俺は半年に一度お世話になってる眼科に向かった。
成人式の前に、通院は済ませておこうと思った。

そうだ、眼科のじいちゃんにも教えてやろう、母さん大丈夫だよって。

俺はそんな風に思っていた。



556:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:26:00.94 ID:sGeGsGTv0

眼科のじいちゃん「………」

俺「どうしましたか…?」

眼科「眼圧高いね…。視野検査しようか。」

俺「は、はあ…」

「まあ、たまにあることだし、大丈夫だろ。」



557:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 00:26:47.34 ID:5cNFxBpX0

え…?



559:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:29:21.06 ID:sGeGsGTv0

眼科「左目が…若干きてるな…始まっちゃったか。」

俺「あ、あの…?」

眼科「華丸くん、冷静に聞いてね。」

眼科「左目の視野が欠け始めてるんだ…緑内障が発症してしまったんだよ。
一度欠けた視野は、今の技術じゃ戻せないから…」

俺「え?」

眼科「しばらく眼圧を下げる治療をするよ。大学は向こうだっけ?紹介状書かないとだね…」

俺「は?」



560:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 00:30:00.64 ID:Mmc4faYc0

いやあ…



561:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 00:31:05.53 ID:z6T1oMQT0

嘘だろ・・
もう止めて
泣くわ



562:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 00:31:11.34 ID:UmVqCCN80

何か因子がないと半年に一回も眼科なんて行かないもんな…



565:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:34:49.32 ID:sGeGsGTv0

眼科「でもまあ、今すぐどうのこうのってレベルじゃまだないから…」
眼科「二ヶ月目薬打ち続けて様子みようか。どれくらいの進行度かもまだ分からないしね。」

俺「もしかして、失明とか…」

眼科「何とも言えない、一生失明しない人もいるし、手術でよくなる人もいるし…
とにかく様子を見てみよう。今は眼圧をさげるしかないね…」

俺「絵とか描いたり…目に負担とかって…」

眼科「基本関係ないけど、できるなら目を酷使するのは辞めたほうがいいかな…」



566:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 00:35:38.60 ID:6Dq2Ia+60

なんで>>1みたいないい奴がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ…



569:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:37:51.48 ID:sGeGsGTv0

俺は幼い頃から眼圧の高い子だったらしく、
そのため定期的に眼科に通っていた。

でも全然大丈夫だったし、一生平気だと思っていた。

緑内障の原因は、正確には分かっていない。
確かに俺は幼い頃から目も悪かった。

ここにきて、発症してしまったのだった。



570:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 00:39:30.61 ID:dfJRCnze0

追い付いた。・゜・(ノД`)・゜・。



571:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:40:51.22 ID:sGeGsGTv0

それからは、もう呆然とした。

ただ呆然。毎日に覇気なし。
今まで当たり前の事が当たり前じゃなくなる?

どうしようか、落ち込んだ。
そして、思った。

絵がもう描けなくなる。

途方に暮れた。



573:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:44:32.32 ID:sGeGsGTv0

俺は二ヶ月間様子を見た。

目立った病気の進行はなかった。

眼科「よかった…これならしばらく目薬の眼圧治療でどうにかなりそうだ」

俺「失明とか…ないですか?」
俺は知っていた。日本で一番目か二番目に多い失明の原因は緑内障だ。

眼科「分からないね…ただしばらくはもつと思うよ。でもね、
病気の兆候が出たってことはいつどうなるか分からない。一生大丈夫かもしれないし、
来年だめかもしれない。 向き合っていくしかないんだね…」



575:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:49:46.84 ID:sGeGsGTv0

しばらくは良かった…現状維持…。

家族にも打ち明けたし、
そに子にも相談した。
母は泣いていた。見ていられなかった。


そに子は泣かなかった。
こういう時に、泣かないんだ。強いと思った。
大切にしたいと思った。

でも、もし俺が失明した時、一番迷惑をかけるのはこの子なんだよな…

そんなはざまで揺れていた。



577:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:52:00.78 ID:sGeGsGTv0

話がとんで申し訳ない。でももう書くようなこともないんだ。

夏が終わり、秋に差し掛かった10月頃。
つい最近だね。
俺は左目に自分でも分かるくらいの違和感を覚え始めた。

目薬治療で落ち着いてたと思っていたから、驚いた。
俺はすぐに地元の眼科に走ったよ。
急いでね。



578:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:53:54.40 ID:sGeGsGTv0

緑内障は、案の定進行していた。

眼科「これは、まずいな…クスリを強くしたいけど、そうなるともう内服薬とか…あるいは手術…」

俺「そうなりますよね」

俺はもうある種覚悟していた。
ちなみに、緑内障は手術での回復はあまり見込めない。
俺の緑内障の場合は、かもしれんが。



580:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 00:59:06.31 ID:sGeGsGTv0

そして、より強いクスリを服用することにした。

手術はその経過次第。可能性としては手術もあるだろう。

家族は泣いていた。でもきっと応援してくれるだろう。

そしてそに子に話した。
「大丈夫だよ。きっと、なんとかなる。なんとかなるんだよ。」
それはそに子の口癖だった。

なんだか色々思い出した。

俺はずっとこの子を見ていたいし、守りたいと思った。

絵もずっと描きたいな。絵が大好きだ。

そに子と話していると、本当に色々なことを思い出す。

そして現在に至るわけだ。



582:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 01:02:01.29 ID:sGeGsGTv0

もしかしたら失明するかもしれない。

俺はもっと焦ると思った。
どうしようもなくなって、自殺も考えるかと思った。

でもちがうんだよ。俺は落ち着いてるよ。

今まで絵を描いてきて、色々な人に出会って、色々楽しいことを経験できた。

何より、描いた絵を残すことができた。
楽しい楽しい、って言って描いてきてよかったよ。

きっとこれからも、俺の描いた絵は残るし、誰かの心に残る。

もし、絵を描いていなかったら…そう思うと。



583:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 01:06:37.16 ID:sGeGsGTv0

もし、絵を描いていなかったら俺はどうなっていただろう。

何もできないまま、この歳で緑内障になっていたら、それこそ…

今、こうやって自分の事を振り返ってみて思ったんだ。確信した。
だからこんなんでもスレにまとめようと思った。
絵を描く人、何かに夢中になってる人に伝えたいって思った。

俺は好きなように絵を描いてこれた。
たくさんの人に俺の絵を届けて、見てもらえた。

だから、今すごく落ち着けてるし、
もしも目が見えなくなっても他のことで頑張ろうって、前向きにいられるんだよ。

だから、俺は絵を描き続けて救われた。
こんなまとめ方ですまん。

絵を描き続けて、本当に良かったよ。



587:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 01:11:27.33 ID:sGeGsGTv0

今は、母は、リウマチが進行してるけど、割と元気でやっているよ。

兄は、働いてる。立派な社会人。

そに子も、元気にやってる。ある種この子とも絵を描いていなかったら出会えなかったね。

俺は…これからどうなるか分からない。
でも絵を描き続けた日々を忘れないで、病気に立ち向かおうと思う。

いつかその日がきてしまっても、また新しく夢中になれることを探すよ。



595:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 01:18:38.31 ID:lqXFPAD80

>>587
お疲れ様です。
あとは、絵さえ見れれば寝れる・・・!w
だめですか?



588:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 01:11:38.26 ID:eTD+pYIQO

>>1の絵を見てみたいな



589:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 01:11:52.22 ID:mpbtpDXM0

>>1
お疲れ様…
やっぱり一度絵を見ておきたい…



590:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 01:15:52.89 ID:sGeGsGTv0

こんなにも長い話をここまで聞いてくれてありがとう。
途中、色々関係ない話とかもあって紆余曲折したけど、読みにくくてごめんね。

もし、今何か夢中になってることがあって悩んでいる人がいるなら、
1つだけ、聞いて欲しい。

偉そうなことは言えませんが、

とにかく続けてくださいね。続ければきっとそれはアナタにとって大切なものになるはずです。

これにて、この話はここで完結です。
本当に最後までありがとう。



591:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 01:16:27.01 ID:0JXu81GB0

お疲れ様
とても心に残るお話をありがとう



592:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 01:17:49.09 ID:/BwLEAXg0

お疲れ様
すごく読みやすかったし、聞けてよかった、ありがとう

ネットの片隅から>>1の幸せを祈るよ



594:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 01:18:34.07 ID:ZZzql2XWO

本当にありがとう>>1
もしかしたらこの先、ずっと絵が描けなくなるとかのものじゃないんだけど
自分もいま病気と戦いながら絵描いてるから涙止まらない。
悩むこともあるけど、好きとか続けたいって気持ちを大切にして描くことと向き合っていくよ。
本当にありがとう。



597:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 01:20:00.62 ID:T86HR8ei0

お疲れ様、
いい話をありがとう。

絵描きだけど、どんなに甘えてるかを思い知らされたよ。
もっとちゃんと向き合おうと思った。

進行しないと良いな…



598:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 01:20:58.89 ID:sGeGsGTv0

絵の要望が多いようなので、サラっと描いてうpしようかとも思います。
見て、ガッカリされるのも怖いですが…w

ここまで見てくれたなら、そりゃ気になりますよね。
今から描くので、下手したら1時間くらいかかりますが、それでもよろしければ、
のちほどうpしますね。



611:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 02:16:20.39 ID:sGeGsGTv0

みなさん本当にありがとう。

こんなにもたくさんの人に見てもらえて、俺は幸せです。
書いてる最中は辛い時もけっこうあったけど、書いてよかった。

今、絵を描いています。正直、絵をうpするのには悩んだんですが
ここまできたら見たい人も多いと思うので。



618:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 03:35:38.41 ID:VZUiLg4P0

最後まで読んだ。
ありがとう。やる気出てきた。
僕も持病をもっているけど、そに子の言う通りだよ。



620:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 03:40:06.89 ID:sGeGsGTv0

遅くなってごめん。
とりあえず描いたよ。
思えば、久しぶりに紙に絵を描いた気がする。やっぱり描くのは楽しいね。

スレのイメージが崩れるかもしれないから、
見たくない人はきっと見ないほうがいい。


一応、俺の大切な人を描いたよ。あんまり、似てないけどねw

d87d4aae

632:名も無き被検体774号+:2011/12/14(水) 03:50:16.90 ID:9dq66ipx0

>>620
うめぇぇぇぇえwwwww
光速で保存した!このスレもテキストに保存しとくよ
最近だらしねぇなって感じた時に見るようにする



693:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/15(木) 00:30:58.92 ID:aWOwtJM70

>>632 ありがとう。。

また、書いてる途中何人もの「自分も絵が好き」「自分も絵で夢を追ってる」
という方々からレスがあって嬉しかった。
何か届いたなら、本当に、書いてよかった。

本当は全員にレスしたいんですが、ごめん…
でも全部ちゃんと読んでます、本当にありがとう。



625:華丸 ◆vk8BsG8fow :2011/12/14(水) 03:44:55.69 ID:sGeGsGTv0

みんな、本当にありがとう。
絵も上げたし、これでもうこのスレは本当に完結だね。

絵を描いててよかったなあ、楽しかった。
これからもしかしたら描けなくなっちゃうかもしれないけど、
それまでまたたくさん描くよ。

みんな本当にありがとう。
最初は迷ってたけど
このスレ立てて良かった。

絵を描き続けたら人生救われた話

絵を描き続けたら人生救われた ②